NGT48事件に見る、組織の危機管理上やってはいけないこと:火に油を注ぐ(3/4 ページ)
アイドルグループ「NGT48」の山口真帆さんが襲われた事件はいまだ収束の見通しがつかない。なぜこうした事態になっているのか。そこには危機管理対応のまずさがあったという。
運営会社の謝罪相手に疑問
次の重要なポイントは、一体何が起こったのか、なぜ起こったのかといった事実を納得のいくレベルで組織が明らかにすることである。
この事件が高い注目を集め、ネット上に「虚実入り乱れた情報が氾濫」し、「憶測が飛びかっている」のは、事実が明らかになっていないから、謎があるからである。
今、最も必要なことは、第三者委員会による事実(ファクト)の開示(発表)である。第三者委員会の報告が遅れれば遅れるほど、当然ダメージも拡大する。
運営会社が会見で特に強調していることが「メンバーに違法な行為をした者はいない」点である。情報漏えいを疑われたメンバーの二次被害につながるが故に当然の主張である。
問題は違法性と、違法ではないが不適切な行動、言動との差異が極めてグレーにならざるを得ないことである。しかし、調査結果はどうであれ、事実が明らかにならなければ疑念は晴れず、デマ、うわさ、憶測が流れ続けることになる。
言うまでもないことだが、危機管理で重要なポイントが対応のスピードである。事実は曲げられないのだから一刻も早い調査結果の発表が待たれる理由がここにある。事実を明らかにし、事態を終息させなければ、ファンとメディアの疑念はいつまでも高いレベルで維持され、ダメージは広がり続けていくのだ。
ネガティブなメディア報道量やSNSの情報拡散量と、それら報道(拡散)期間の掛け算(積)が、ダメージの総量になる。情報量の縮小はもちろん必要だが、報道(拡散)期間の短縮こそが危機管理(ダメージコントロール)で最も有効性が高い。ポイントは事態を終息させることに尽きるのだが、そのためにやるべきことがいくつかある。
第一が謝罪。肝は誰に対して謝罪するのかを明確にすることである。会見で運営会社の謝罪の言葉は「皆さまに、ご迷惑、ご面倒、ご心配をおかけし……」とコメント。続いて「ファンの皆さん、……メンバーみんなに」となっている。
謝罪の相手を具体的に示すことと、その優先順位が重要である。この事件で真っ先に謝罪すべき相手は被害者の山口さんだったのではないか。次にこの事件で不安な思いをしている他のメンバー、そしてファンという順番である。ファンは各メンバーと一体化した心理がベースにあるのだから、メンバーに寄り添った謝罪はファンに対する謝罪と同義になる。抽象的な「皆さま」といった言葉は最後にするべきである。
誰に、何を謝罪するのかを明確にしないと謝罪の効果も生まれないのだ。
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