NGT48事件に見る、組織の危機管理上やってはいけないこと:火に油を注ぐ(4/4 ページ)
アイドルグループ「NGT48」の山口真帆さんが襲われた事件はいまだ収束の見通しがつかない。なぜこうした事態になっているのか。そこには危機管理対応のまずさがあったという。
新潟で会見すべきだった
このほか、被害者への補償、組織としての処分、再発防止策の3点が事態の終息に必要な条件になる。特に留意が必要なのが、再発防止策が実効性のある具体的な内容であるかどうかだ。
地域密着アイドル特有のリスクとして、コミュニティーが小さく、ファンとアイドルとの距離が近く、つながりやすい点がある。SNSが時間と距離を超えたコミュニケーションを可能にしている上に、物理的な高い近接性のリスクが存在しているのは事実である。
最後に、運営会社の情報公開(記者会見)についても問題があったことに触れたい。それは会見が東京で実施された点である。新潟のアイドルグループであることを考えれば、会見は当然、アピールすべき人たちがいる新潟で行うべきであった。
事件後に初めて運営会社が公の場に出てきた会見は1月14日に開かれた。この日はAKB48グループメンバーの成人式が神田明神で行われ、その場に集まった報道陣に対して急遽セッティングされたという印象だ。これでは会見ありきとは言い難い。
危機管理は発生現地での対応、メディア対応が基本である。時間と距離が消滅したネット時代にあってもそれは変わることがない。
今回の事件が起きてから、もう2カ月が過ぎた。関係者には一刻も早く真相解明に努めてもらうとともに、日本の多くの企業や組織においてはこれを他山の石として、危機管理の重要性を再認識してもらいたい。
著者プロフィール
篠崎良一(しのざき りょういち)
共同ピーアール株式会社 広報の学校 学校長(広報コンサルタント、危機管理広報コンサルタント、メディアトレーナー)
早稲田大学卒。出版社を経て、共同ピーアール株式会社入社。取締役副社長を経て現職。2003年5月『広報の学校』を開校。13年1月『PR総研』を設立。企業・団体の広報・危機管理コンサルティング、広報・危機管理研修担当。
関連記事
- 日大アメフトの悪質タックル問題 経営者はこれを冷静に見ていられるのか
日大アメフト選手の悪質なタックルが監督からの指示だったとして、大きな問題となっている。こうしたパワハラ行為は、企業においても決して軽視できない。経営トップから不正を強要される社員が相次いでいるからだ。 - スルガ銀行の不祥事を地銀は笑えない
第三者委員会の公表によってスルガ銀行の常軌を逸する実態が明らかになった。この一連の事件については開いた口がふさがらない。しかし一方で、他の地銀はこのスルガ銀行の不祥事を笑っていられるのだろうか。 - 人の気持ちが分からないダメ管理職はAIに取って代わられる
優れたマネジャーと駄目なマネジャーの違いとは何だろう? プルデンシャル生命保険で伝説のマネジャーと呼ばれ、『25年間「落ちこぼれチーム」を立て直し続けてわかった マネジャーとして一番大切なこと』の著者でもある八木昌実氏が組織マネジメントの本質を語ってくれた。 - 「24時間戦えますか?」から30年 平成の日本から“ブラック企業”は減ったのか
平成初期に「リゲイン」のキャッチフレーズ「24時間戦えますか?」が流行してから、約30年がたった。だが現在も、長時間労働が常態化している“ブラック企業”に苦しめられる労働者が後を絶たない。この30年間で、日本企業の労働環境は本当に改善されたのか。“ブラック企業アナリスト”こと新田龍さんに意見を聞いた。 - AKB48選抜総選挙、沖縄開催の“本当”の理由
今週末に沖縄で「AKB48選抜総選挙」が開催される。同イベントは毎年大きな経済効果を生み出していて、今や地方の企業や自治体にとっても喉から手が出るほどのものになった。これまでは姉妹グループがある都市で開かれていたが、現状その条件に該当しない沖縄は“異例”。その舞台裏に迫った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.