都市部の無印を圧倒、ニトリはこのまま順風満帆か?:小売・流通アナリストの視点(2/4 ページ)
「無印良品」を運営する良品計画が業績予測を下方修正した。その要因の1つが、都市部で攻勢をかけるニトリとの競合の影響だという。いまや大都市圏にも出店を加速するニトリに死角はないのか?
地方で拡大したホームセンター
下図はニトリのアニュアルレポートの抜粋で、これまでの売り上げや店舗数の推移を示すグラフである。これを見ると分かると思うが、1990年代までゆっくりと成長していたこの会社が90年代後半から成長スピードを加速させている。
99年時点での家具小売業売上ランキングをみると、ニトリは4位であり、まだこの時点では、現在の圧倒的な存在感は想像できない。この当時のランキングをみれば、急速に人口集中が進み、住宅数が飛躍的に伸びた関東地方の企業がその恩恵にあずかって業界上位企業となっており、その下には、概ね地盤の人口規模の順に地方中堅チェーンがひしめいていた。この時代に地盤を超えて上位に成長することができたのは、多くはホームセンターを併設するタイプの家具チェーンで、その代表格がナフコである。
70年代に車の普及を背景に家庭用雑貨(キッチン、バス、トイレなどで使う消耗品など)、DIYなどの住関連の総合店として勃興した日本のホームセンター市場は、モータリゼーションの進展とともに地方で大きく拡大した。家具チェーンの中には、家具と住関連商品との親和性から成長するホームセンターに参入して家具店と併設する企業があった。購買頻度の低い家具だけを売っていた家具店に、より来店頻度の高い家庭用雑貨を売るホームセンターを併設したことは、当時は競合家具店との圧倒的な差別化要因となった。めったに行かない家具店よりも、いつも行くホームセンターの中の家具売場の方が選ばれるからだ。
これにより、市場規模の小さい九州でシェアを伸ばして成長し、出店エリアを拡大して競合を圧倒するという手法で大成功したのがナフコだった。同様の手法で上位にのし上がったのが島忠や山新であり、これらホームセンター併設型家具チェーンは、2017年ランキングでも上位に名を連ねる。
ただ、新旧ランキングを見て分かるように、このタイプの上位企業は、その間ニトリのようには成長できなかった。00年代に入って、ホームセンター市場が飽和してしまったのである。
ニトリはこの時点で、既に業界唯一の製造小売業としての体制を整えており、その後、「お、ねだん以上。」で知られるコストパフォーマンスの高い商品で、地方を席巻することになったのは、ご存じの通り。ニトリの成長が00年代以降、急加速したのには製造小売業化というビジネスモデルに加えて、その品ぞろえをホームファニシングという家具+住関連雑貨の構成にしたことが大きい。
住まいに関わる多様な雑貨を自社製造で取りそろえたことで、コストパフォーマンスの高い雑貨店というポジションの確立に成功したニトリは、当時競合する存在がほとんどいなかった地方や都市郊外で女性消費者の高い支持を得た。このときニトリにはクルマを運転する女性が世の中で増加していたという「神風」が吹いたのだ。これがホームセンター併設家具チェーンとの運命を分けた。
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