都市部の無印を圧倒、ニトリはこのまま順風満帆か?:小売・流通アナリストの視点(3/4 ページ)
「無印良品」を運営する良品計画が業績予測を下方修正した。その要因の1つが、都市部で攻勢をかけるニトリとの競合の影響だという。いまや大都市圏にも出店を加速するニトリに死角はないのか?
巨大家具雑貨チェーンに
90年代まで順調に拡大してきたホームセンター市場が飽和に至ったのは、地方でクルマの普及が進み、一家に1台、自動車がある状況になって、ロードサイド市場の拡大が一巡したことによる。
しかし、2000年代ごろからは、地方で女性の免許保有者が増えていき、セカンドカーの普及(主に軽自動車)が進み始めたことで、地方のロードサイドに女性ドライバーが急速に増加した。これにより、ロードサイド市場は女性に支持される店が増えることで再活性化した(表)。
その代表格が、ニトリ、しまむら、ユニクロ、そしてドラッグストアチェーンといった企業である。このような時代、武骨なDIY関連を中心とするホームセンターは、女性の嗜好とは合わなかったようで、ほとんどのホームセンターが女性客の支持を十分に拡大できなかった。ニトリは無印良品と同等の品質の廉価版を取りそろえて、女性目線の雑貨店が存在していなかった地方や郊外マーケットを、一気に席巻することに成功した。ホームファニシング、製造小売業、地方ターゲットという独自のビジネスモデルが組み合わさったことで、ニトリは2位以下が追随不可能な巨大家具雑貨チェーンとなったのである。
1990年代初頭に2.7兆円程度だった家具小売業の市場規模は、2016年には1.1兆円にまで縮小し、総売場面積は6割に、事業所数は4分の1にまで減少した。こうした縮小市場の中で、ニトリが10倍にも成長したのだから、他の家具チェーンにとって、市場は5分の1になったようなものであり、極めて厳しい環境が続いたことだろう。
それでなくとも、住環境が大きく変化し、洋服ダンスからウォークインクローゼットに変わるなど、作り付けの収納が増え、大物家具の需要自体が少なくなっている。まさに家具小売業という概念自体が変わっていかざるを得なかった環境の変化を、先取りしたのがニトリだったと言えよう。
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