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目指せ蛍の光 “つい帰宅したくなる”新曲、USENが制作背景に意外な心理メカニズム(2/3 ページ)

USENがオフィス向けの「帰宅したくなる」効果を狙った曲を制作。職場の人間の帰宅に至る心理を分析、3部構成で自然と帰りたくなるよう促す。

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帰宅を「知らせる」のではなく「促す」

 増根さんは「蛍の光はどちらかというと(帰宅を示す)サイン音やサイレンのようなもの」とみる。今回の新曲は、閉店時間をただ知らせれば客が帰ってくれる小売店や飲食店ではなく、働いている人に自発的な帰宅を促したい会社の職場で流すため、あくまで「帰宅の気分になってくれる」ような曲を目指したという。

 そこで作曲の前に調査したのは「どんなメロディーだと帰宅したくなるか」ではなく、そもそも「職場で終業近くのビジネスマンがどんな気持ちになっているのか」だった。

 制作チームはオフィスで働く900人に、「思うように作業が進まない」「順調に進んでいる」といった仕事の進捗に応じて、どんな心理状態に自分があると思うかWeb上でアンケートを取った。職場で仕事している人間が終えて退社に至るまで、いかなる状況でどんな感情が強く動いているのか突き止め、終業時間を迎えて帰宅していくまでの心理プロセスを解き明かそうとした。

 結果、増根さんによると、仕事中から帰宅の行動に移るまでに3段階の感情の状態が存在すると判明した。1番目は「思うように作業が進まない」状況で、不安や驚愕といった感情が当てはまる。2番目は「仕事が順調にいっている」状態で、活気や元気、慎重で丁寧、といった気持ちになっているという。最後の3番目は「仕事が順調に進められて、切りのいいところで終業時間になった」状況で、主に活気や元気の感情で占められている。

 USENの担当者はこの3つのシチュエーションと感情に合った既存の楽曲リストを作成。ミュージシャンに見せて相談し、オフィス内で流すのにふさわしい曲調や長さか考慮した上で作曲してもらった。第一楽章では「思うように作業が進まない状態の心理に寄り添うように静かでメランコリック」、第三楽章では「これからパーティーに行くように軽やかに帰ってもらいたいイメージ」(増根さん)と、聴く人の気分に沿って曲を構成した。

 増根さんは「飲食店などでは帰宅時間を(蛍の光で)サインのように知らせて客に帰ってもらえればいいが、この曲は従業員が自然に帰りたくなるようにする必要がある。従業員に『せかすなよ』と思われないように工夫した」と振り返る。

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USENのオフィス向け音楽サービス「Sound Design for OFFICE」(同社Webサイトから引用)

 もともとUSENはオフィス向けに従業員の集中力向上やメンタルケアにつながる音楽を配信する「Sound Design for OFFICE」というサービスを5年前から展開しており、今回も音楽と心理に関するこれまでの知見を生かした。

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