連載
自動車メーカー各社の中国戦略:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/6 ページ)
いまや世界で1年間に販売される新車の3分の1近くが中国での販売となっている。魅力的なマーケットである一方で、中国というカントリーリスクも潜んでいる。今回は日本の自動車メーカーが中国にどんな対応を取るか、その戦略差を比べてみたい。
ホンダの場合
さて、ホンダが欧州輸出車の生産拠点を中国にしたのは、それによって効率化が図れるからだ。規制が近似であれば同じ工場で作りやすい。
もちろん輸送の問題はある。ホンダの工場がある武漢という都市は内陸に位置する。武漢や重慶は長江の水利を前提とした工業都市だ。河口は上海の北側になる。つまり大型自動車運搬船に積み込まれたクルマは台湾と九州の間で東シナ海に出た後、マラッカ〜シンガポール海峡やスエズ運河を経由してサウザンプトンやロッテルダム、ハンブルグなどへ向かうことになる。中国国内の輸送距離を考えれば日本からの輸出とほぼ同じかむしろ遠いくらいだ。つまり欧州への輸送面から見ると限りなく最悪に近い。
ホンダが今の生産台数からできるだけ速く成長したいと考えるならば、今伸びている中国で台数を伸ばすのは確かに手っ取り早い。投下できる資本に限りがある以上、今日明日一番売れる場所に投下する気持ちは分かる。ただし、筆者はこれに少し異論を述べておきたい。
カントリーリスクを考えると一極集中は望ましくない。ホンダは今、米国と中国に集中し過ぎているように思う。それはギャンブル性が高い。リスクのバランスを取るためには、インドとタイに追加投資をするべきだったのではないか? 輸送面でも大幅な改善が見込める。
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