連載
自動車メーカー各社の中国戦略:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/6 ページ)
いまや世界で1年間に販売される新車の3分の1近くが中国での販売となっている。魅力的なマーケットである一方で、中国というカントリーリスクも潜んでいる。今回は日本の自動車メーカーが中国にどんな対応を取るか、その戦略差を比べてみたい。
日産の場合
2018年8月、日産自動車はNECと共同出資で立ち上げた傘下のバッテリー製造会社「オートモーティブエナジーサプライ」を中国企業に譲渡すると発表した。
電動化に期待をかける日産がなぜ、電動車の心臓とも言えるバッテリー製造会社を中国企業に譲渡するかといえば、それが中国政府の意向だからと考えるのが順当だ。中国は今、強引な政策によってEV(電気自動車)の世界的リーダーになろうとしている。そのためにはバッテリーでトップに立つことだ。そういう狙いを持って、中国で世界中の自動車メーカーに対し「EVを製造するにはバッテリーを中国から調達するように」と圧力をかけ続けている。
つまり日産が莫大な研究開発費をかけてバッテリーの開発や生産を行っても、日本製である限り明るい将来が見えない。現在全世界で年間約100万台販売されるEVのうち、中国は約60万台と圧倒的なマーケットとなっている。
その中国で売るならば、と条件を付けられたら逆らいようがない。日産は中国でのEV販売を確保するために、虎の子のバッテリー開発会社を中国に譲渡せざるを得なかった。そう筆者は見ている。
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