あなたは「上司の命令なし、社員が何でも決める」職場で働きたいか:天国? それとも地獄?(3/4 ページ)
企業で上司が一方的に命令しない「自律的」な職場が広がっている。給料や事業方針も社員が話し合ったり自己決定。苦労して例のない取り組みに挑戦する理由とは?
社員の生産性、2.5倍に
職場全体で苦戦しながら進めた自律的な組織スタイル。大山さんも、営業用の資料作りなど今までは坂東社長の決済が必要だった業務を自分の判断で進めていいことになり、最初は「本当にいいの?」と当惑した。
「従来は坂東さんという決裁者が責任を負ってくれていたが、これからは責任も自分が負うことになる。新卒以来ヒエラルキー型の組織にいた自分には慣れるまで怖かった。だが、彼にお伺いを立てることがなくなり、仕事のスピードが上がってストレスも無くなった。問題も今のところ起きていない」(大山さん)。
坂東社長は「18年の1年間は経営スタイルの変化から辞める人も出た」と打ち明ける。しかし、売り上げなどで見た1人あたりの生産性は2.5倍ほどに伸びたという。「社員が会社の業務を“自分事”として捉えるようになり、能力をより発揮できるようになった」(坂東さん)。本業の組織改善のコンサルにも、自社で実験した経営手法をさらに改善して応用しようと取り組んでいる。
こうした社員に経営層の権限を譲り渡す動きは、中小を中心にさまざまな企業で広がっている。自律的経営について研究する一般社団法人・自然(じねん)経営研究会が2月に発表した調査結果では、25社のこうした「ティール」「ホラクラシー」といった概念を取り入れた経営実態が明らかに。多くが社員の給与の公開など、ブレスカンパニーと同様に情報の透明性向上を進めている結果になった。
同会の代表理事で、自身が社長を務めるIT系不動産サービスのダイヤモンドメディア(東京都港区)でも自律的経営を長く実践してきた武井浩三さんは「部下が上司の給与額を知らない時点で、上司が部下の生殺与奪を握っているのと同じ。情報がオープンな環境でないと人は自己決定できない」と説明する。
ダイヤモンドメディアでも創業から10年以上にわたり、業務の多くを社員間の自然な話し合いや自己決定に委ねる仕組みに変えてきた。多額の経費がかかる事業やイベントのアイデアが社長の知らないところで発生しては成功するなど成果を挙げてきたが、やはりネックになったのが給与額を決める話し合いだったという。
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