焼き鳥からうどんへ“華麗”にシフト トリドールが戦略転換できたワケ:丸亀製麺で有名(2/4 ページ)
セルフうどん店の「丸亀製麺」で急成長したトリドールHD。実はもともと焼き鳥チェーンを経営していた。どうして畑違いともいえる別業態でも成功できたのか。
女性向けの焼き鳥居酒屋
たった8坪の焼き鳥店として創業した同社が、どのような戦略転換を行いながら国内大手外食チェーンにまで上り詰めていったのかを分析していきます。
85年8月、兵庫県加古川市に8坪の焼き鳥居酒屋「トリドール三番館」として創業し、順調に3店舗まで増えていったトリドールは、それまでの男性サラリーマンなどをターゲットとした居酒屋風の焼き鳥店から最初の戦略転換を図ります。若い女性をターゲットとした洋風でオシャレな焼き鳥店にシフトしたのです。この戦略転換によって、当時空白マーケットであった「若い女性が入れるオシャレな洋風焼き鳥店」を開拓できました。
こうした時代のニーズ、つまり「時流」に乗る戦略を「時流適応戦略」と言います。しかし、時流適応戦略はすぐに類似業態が出現するというデメリットもあります。さらに、流行に敏感な若い女性客をターゲットとすることは、業態寿命が短い=飽きが早いという危険性もあります。
当初は繁盛していたトリドールの洋風焼き鳥店も、徐々に客数が減少していきます。同社はこうした教訓などから、一過性の時流にとらわれない「地域のお客に愛されるお店づくり」へと戦略転換することにしました。
ファミレスタイプの焼き鳥店へ
そこで、創業から14年後の99年に地域の家族客が気軽に来店できるファミリーレストラン型の焼き鳥店「とりどーる」を出店します。日本人にとってなじみ性が高い焼き鳥、唐揚げ、釜めしという3大カテゴリーを主力商品に据え、100席以上の大型店で臨場感のあるオープンキッチンなどを武器に大繁盛しました。2008年には30店舗近く出店しています。現在でも郊外店が中心ながら、1店舗平均で年商1億2000万円を売り上げる繁盛モデルとなっています(丸亀製麺の1店舗平均年商は1億1400万円)。
同社はこのファミリーレストラン型焼き鳥店「とりどーる」の展開により、外食企業として大きな成功を手に入れました。しかし、順調に見えた同社にとって経営を揺るがす大きな出来事が起きます。それは04年から世界的に大問題となった鳥インフルエンザの流行です。こうしたネガティブなニュースに対して敏感な客層であるファミリー客をメインターゲットとする「とりどーる」も当然ながら大きな影響を受けて売り上げが低迷します。
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