大矛盾! 他社の残業を副業にする人も?:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
政府が「副業解禁」にかじを切ったことで、副業をする人が徐々に増えている。しかし一部では、一律に残業をカットしてしまい、その結果、処理できなくなった仕事を外注に丸投げするケースも。さらにはこうした業務を副業として請け負う人もいるという……。
政府が「副業解禁」にかじを切ったことで、副業をする人が徐々に増えている。副業はキャリアの幅を広げることにつながるが、社会的に意義のあるものにするためには、働き方改革とセットで議論する必要がある。
一部では、業務のムダを見直さず、一律に残業をカットしてしまい、その結果、処理できなくなった仕事を外注に丸投げするケースが出ている。こうした業務を副業として請け負う人もいるわけだが、社会全体で見た場合、長時間労働を別の会社で行っているに過ぎず、本質的に意味がない。
副業で長時間の労働を強いられている人も
パーソル総合研究所が行った「副業の実態・意識調査」の結果によると、正社員で現在、副業している人は10.9%で、今後、副業したいと考えている人は41%に達した。一方、33.1%の人が副業をしたいと考えていないと回答している。過半数が副業をしている、もしくは副業に前向きということなので、副業をする環境は整ってきたといってよいだろう。
副業を始めたタイミングについては41.3%の人が1年以内と回答している。政府の副業推奨というタイミングに合わせて副業をスタートした人が多いようだ。
すでに一部の人材会社は通常の派遣社員の営業に加え、副業による業務の請負についても企業に紹介するようになっている。半数の企業が社内規定で副業を全面禁止しているが、条件つきで許可するところも含めると半数は副業OKという状況であり、副業は働き方の一つとして徐々に社会に定着しつつある。
では、副業をしている人はどのくらい稼いでいるのだろうか。
同調査によると副業による平均月収は6.82万円となっており、時給に換算すると1652.1円である。一般労働者の残業の平均時給(毎月勤労統計調査における所定外労働)は1906円なので、あくまで平均値だが、会社で残業するよりも副業の方が給料は安い。
一方、副業に費やす時間については、かなり長いという結果が出ている。
1週間あたりの副業にかける時間は平均10.32時間となっている。平日だけ仕事をした場合には、週5日で1日あたり約2時間、休日に働いた場合には1日5時間を業務に費やしている計算だ。この調査では本業と残業を併せた業務時間についても質問しているが、この結果は少々驚くべきものである。
1週間の総労働時間が70時間を超える人が11.1%、60〜70時間という人が16.6%もいる。週の労働時間が70時間というのは、週5日と仮定した場合には1日あたり14時間労働なので、かなり危険な水準といってよい。調査対象者の13.5%が過重労働で体調を崩した経験があり、13%が本業に支障を来したと回答しているので、無理な環境で副業をする人が多いと考えられる。
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