有線放送のUSENが働き方改革に商機を見出だす訳 田村社長に直撃: 「蛍の光」並み? の帰宅曲も(2/3 ページ)
有線放送で知られるUSENが働き方改革や人手不足に商機。職場で帰宅を促す曲や店舗の省人化を促すサービスを強化している。
働き方改革、精神論より環境構築を
――USENによると、蛍の光は聞き手にあくまで「帰宅の時間を告げる」効果しか持っていない可能性が高く、今回の新曲は帰宅したくなる気持ち自体を醸成する効能を狙ったそうですね。
田村: 蛍の光や「別れのワルツ(蛍の光を編曲した物で同様に閉店時などに流されている)」を聞いても、実は日本人しか帰らないものだ。日本に来た外国人には(これが帰宅を知らせる曲だと)分からないから、彼らは帰らない。これは日本人に刷り込まれてきた曲だからだろう。
また、職場で仕事が残っている従業員に、(曲を通じて)「帰れ」というのは矛盾していると思う。「決まった時間の中で働く」ということを仕組み化していかなくてはいけない。私は精神論で(働き方改革を)やれる部分は知れていると思っている。まずは環境構築から入る必要がある。
この曲もこれからブラッシュアップしなくてはいけないが、一定時間かけることで世の中の役に立ってほしいと思う。
次世代の店舗で有線放送は使われるか
――USENと言えば有線放送のイメージが強い人も多いと思いますが、実際には近年、IT化による飲食店などの支援サービスやエネルギー事業も強化しています。業界首位である有線放送以外の事業の柱を重視している狙いは何ですか。
田村: 音楽マーケットは縮小している。CD生産金額は以前(ピーク時の1998年)は約6000億円だったが、現在は1000億円台に縮んできている。スマートフォンなどデバイスの発達も大きい。
今の若い人は、音楽の聴き方が決定的に変わったと思う。5〜10年後、この人たちがお店を経営するようになった時に音楽放送サービスを使うのだろうか。現在、音楽配信事業は伸び悩んでいる。そこから生み出される利益は維持しつつ、次の柱を作りたいと考えている。(音楽配信は)ブラッシュアップしつつ、次の事業に投資していきたい。
店舗の省人化に貢献を
――確かに、USENの音楽配信の顧客店数は2001年の約87万店から17年には約62万店と、下げ止まってはいますが停滞傾向にあります。一方で、主要顧客である飲食店を始めとした店舗では音楽配信だけでなく、決済や注文といった業務をIT化で効率化するサービスを打ち出しています。POS(販売時点情報管理)レジや、18年には客が自分で注文できるタブレット(U-Order)なども販売し始めました。
田村: 店の心臓部はレジだ。いろいろなハードやソフト、アプリケーションがそこに連関していく。キャッシュレスサービスもつながっているし、会計ソフトもレジと連動するので簡単にレジを(閉店後の作業で)閉められるようになる。アルバイトのシフトの管理なども店長が手作業で行わず、レジでやれるようになる。
また、店舗の省人化の解決にはU-OrderやPOSレジで対応できているが、うちは(店側の)人材確保のサービスについてはあまりできていない。スポットでこの時間だけアルバイトができます、といったアプリはスタートアップの企業が既に発表している。そういった顧客の人材確保へのニーズを受けたサービスも今後は検討していきたい。
――大手外食チェーンやコンビニも自社で省人化の取り組みを進めています。USENのサービスも今後、店舗の省人・無人化促進をさらに強化していくのでしょうか。
田村: 無人化できる店舗は無人になってもいいと思う。自分で決済して店を出るといったように。ただ、私たちが向き合っている飲食店は人と人との会話、ホスピタリティーあってこそ再来店につながる。うちとしては、省人化店舗と「人で勝負」の店舗の“両張り”をしていくと思う。
ただ、(USENの主要顧客である)中小の飲食店や個店は、1〜2時間会話しながら食事を楽しんだりする「ぬくもり重視」の店なんだろうと思う。逆にチェーン店はコンビニに近いイメージかもしれない。今後、コンセプト店としての無人化店舗は日本でも出てくるだろうが、全部が置き換わるか私は懐疑的だ。
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