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“冬の時代”から始まった平成アニメ、いかに2兆円産業に飛躍したかジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る(4/5 ページ)

アニメ・映像ジャーナリストの数土氏が平成アニメビジネス史を総括する。冬の時代から今の繁栄にどう至ったのか。

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世界に爆発的に広がった日本アニメ

 もう一つ、平成を通してアニメビジネスが拡大したのが海外市場である。日本のアニメは1960年代から海外に輸出され既に人気も高かった。しかし60年代から80年代の海外での日本アニメビジネスは、決して大もうけではなかった。番組販売価格は安く、番組販売だけで終わりがちで周辺ビジネスに波及しない。また視聴者もそれらが日本の作品だと意識することはほとんどなかった。

 状況が変わったのは、やはり平成になってからだ。95年に『ドラゴンボール』や『セーラームーン』が米国に上陸、さらに『ポケットモンスター』が続くことで、子どもたちの支持を得るようになった。日本アニメはキャラクターグッズやゲームやマンガとしても消費されるようになってきた。さらに『AKIRA』『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』などのハイエンドな作品が海外のクリエイティブ層に刺さり、映像ソフトが売れ始める。2000年を過ぎた頃には、日本アニメの海外市場が確立するようになった。

 ところが世の中はそうスムーズに進まない。06年頃に日本アニメブームは一気にはじける。作品の過剰供給と現地TV放送の減少、さらにインターネット上の海賊版の氾濫でビジネスは一挙に縮小した。海外で日本アニメを扱う企業も次々に経営破綻した。

 「海外での日本アニメビジネスはこれで終わりか?」と思われた中、平成の終わりとなった10年代に大逆転が起きた。インターネット上の動画配信サービスの普及だ。配信向けに日本アニメ番組の需要が急拡大し、さらに手軽にアニメを見られるようになったことで海外アニメファンが大きく増えた。

 今やグッズやゲーム、モバイルコンテンツ、音楽、ファンイベントまでマーケットは周辺に広がりつつある。日本動画協会の調査では、17年の海外の日本アニメのユーザー市場は9948億円にもなった。市場全体の2兆1527億円のうち約半分が海外と、今や日本アニメの成長を支える柱なのである。

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