印鑑廃止、業界団体の反発で見送り これは「異常な光景」なのか?:“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
業務手続きのオンライン化を進める法案が一部見送られた。印鑑業界が猛反発したのが原因。これは果たして「守旧業界の特殊事例」なのか?
印鑑業界は果たして“特殊”なのか?
行政のオンライン化は待ったなしの状況であることに加え、押印という制度そのものが、本人確認の手段として完璧ではないことは多くの人が認識しているはずだ。実際、同協会の要望書には「欧米のサイン制度と違い、代理決済(本文ママ)できるという印章の特長が、迅速な意思決定や決裁に繋がり・・・」という驚くべき文言が入っており、本人以外が押印する可能性があることを業界として認めてしまっている。
これに加えて、技術の進歩でなくなっていく仕事に対してすべて政府が金銭的な補償をしていては、予算がいくらあっても足りないのは明白である。
しかしながら、時代の流れを否定し、従来制度の維持や、制度が変わった場合の金銭的補償を強く求める印鑑の業界団体は、果たして特殊な人たちなのだろうか。筆者はそうは思わない。日本社会では何か新しいことが起こるたびに、あちこちでこうした圧力が生じており、印鑑のケースは特段珍しいことではない。
日本では受動喫煙対策法が事実上、骨抜きになっており、現時点においても先進国で最低といわれる禁煙対策がさらに遅れることが確定的となった。喫煙者はすでに少数派であり、諸外国では禁煙化の流れが確定しているにもかかわらず、いざ立法措置となると反対の声によって覆されるのが現実である。
日本の各業界には、補助金が網の目のように張り巡らされており、補助金の廃止が検討されるたびに各業界は猛烈なロビー活動を行う。大きなニュースにならないのでほとんどの人が気付いていないだけで、このような光景は永田町では日常茶飯事である。
これに加えて日本の場合、こうしたムダな補助金が日本人の雇用や賃金を支えているという面があり、もしすべての業界の活動を完全に市場経済に任せれば、おそらく数百万人単位の失業者が出る。
ムダな補助金や規制に賛成ですかと問われれば、ほとんどの人が反対と回答するはずだが、実際に自分の仕事に関係する話になると、皆、顔色を変えて猛烈に反対する。これをやゆした言葉が冒頭に紹介した「総論賛成、各論反対」である。
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