「隠すことは何もない」? ネットの“のぞき見”、鈍感さに潜む危険:世界を読み解くニュース・サロン(1/6 ページ)
タクシーの配車アプリなど、ネット上のプライバシー問題が注目されている。この問題について「隠すことは何もないから気にしない」という主張が根強くあるが、本当にそれでいいのか。自分の情報を“見られる”ことの本当の問題とは?
最近、インターネット上のプライバシー問題がかなり注目を集めている。
日本では日本交通系のJapanTaxi(ジャパンタクシー)が配車アプリで、「ユーザーに十分に説明せずに位置情報などを利用したとし、個人情報保護委員会から行政指導を受けていた」と、日本経済新聞が最近報じた。この配車アプリは、ユーザーがタクシーを下車した後も行動を追跡していたという。
世界に目を向けると、大手SNSのFacebookが、広告対象をピンポイントで設定できる広告サービス(ターゲティング広告)について、求人や住宅売買、信用取引などで年齢や文化的背景、郵便番号を基に対象を絞る仕組みを廃止すると発表。ターゲティング広告では、地域や属性、人種などを事細かに絞って広告を打つことができるのだが、それが差別を助長するとして問題になっていた。
これら以外にも、プライバシーにまつわるニュースは毎日のようにメディアで取り上げられている。
問題の本質は、さまざまな情報がデータ化されてしまうネット時代に、ユーザーのプライバシーをどう扱うのか、ということだ。5G(第5世代移動通信システム)の時代が迫り、さらに通信速度が速くなり、扱える情報容量が増大していく中で、今後さらに個人のデータ量も比例して増えていくことになる。そんな時代の到来を前に、プライバシー問題が注目されるのは必然なのかもしれない。
筆者も、ネットにおけるプライバシーの問題について聞かれる機会が増えているが、そんな議論になると必ずこんなふうに主張する人がいる。
「自分は何も隠すことがないから、気になりませんよ〜」
この言い分には一理ある。実はこの主張は、欧米でもよく聞かれる。米国人の知人にも「だって、見られて困ることはほとんどないからねえ」と言われたことがある。
こうした考え方に賛同する人は少なくないだろう。ただ一方で、プライバシー問題を重要視している人たちも多い。果たしてどちらの言い分が正しいのか。本当に、「隠すことはない」から、データのプライバシーを気にする必要はないのか。そもそも、プライバシーって、そんなに大事なのか。
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