「隠すことは何もない」? ネットの“のぞき見”、鈍感さに潜む危険:世界を読み解くニュース・サロン(3/6 ページ)
タクシーの配車アプリなど、ネット上のプライバシー問題が注目されている。この問題について「隠すことは何もないから気にしない」という主張が根強くあるが、本当にそれでいいのか。自分の情報を“見られる”ことの本当の問題とは?
どこまであなたは見られているのか
どこまであなたは見られているのか。冒頭のタクシー配車アプリなら、車内のカメラでユーザーの性別を見極めて、それに見合った広告をデジタルサイネージで流していた。またGPS(全地球測位システム)を使ってユーザーの位置を追跡し、どこの店舗を訪れたかなどを調べていた。
Facebookなら、ユーザーの年齢から名前、趣味、学歴、職場、友人関係などといった属性情報だけでなく、携帯電話の番号から機種、位置情報、撮影された写真の詳細や場所、旅行先や出張先での行動、「いいね!」などをしたコンテンツ、読んだニュースなどをデータベース化している。さらに、Facebookが連携する広告主などが持っている顧客情報に、ユーザーの個人情報が何かマッチすれば、それに則した情報をユーザーに提供する。
またGoogleも、ユーザーがネット検索した履歴や、訪問したサイトなどをつぶさに記録し、ユーザーが今興味を持っている商品の広告などを表示する。今は批判が起きて中止したが、2017年までは、個人のGメールの内容もチェックして、使われた単語などを調べて広告を表示していた。
Amazonなどの通販サイトでも購入履歴は記録されているし、SNSと連携したアプリを使ってコンビニで支払いをすれば、あなたが何を食べているのかも分かるし、好きなお菓子の傾向も分かる。ドラッグストアや薬局などを利用すれば、現在の健康状態、持病なども知られてしまうだろう。
これら全てが個人データであり、記録されている情報だ。もはやあなたに聞くよりも、ネット上で知らずに集められているデータを見たほうが、あなたのことはよく分かるかもしれない。そんなレベルで情報は集約されており、それをもとにしたネット上のサービスがこちらの意思に関係なく、提供されている。
つまり、プライバシーを気にしないというのは、家の中をのぞかせているようなものだと言っても過言ではない。ほとんどの人たちは家の中や生活の様子を見られたくないから、カーテンを取り付け、出掛けるときは自宅を施錠する。今ネット上に集まっている個人情報は、自宅の中にある非常にプライベートな情報とほとんど変わらないのに、「カーテン」や「施錠」はいらないというのは楽観的すぎると言えないだろうか。
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