会社員という働き方の限界
筆者は、14年に、すでに会社員としての働き方には限界があるという警鐘を鳴らしていた(『君の働き方に未来はあるか?――労働法の限界と、これからの雇用社会』光文社新書)。しかし、そのときに予想していたよりはるかに速いスピードで、筆者の懸念は現実化しつつある。その原因は、技術革新の恐るべきスピードにある。
真の意味の「働き方改革」は、法律や制度を変えることによって起こるのではない。働き方を変える原動力は技術革新にある。もちろん、技術革新があっても、それがどう社会実装され、活用されていくかについては、さまざまな要因がからみあい、その将来像を正確に予測することは容易ではない。AIやロボットやICTが発達するからといって会社員が消えていくと言うのは、論理の飛躍であると思う人も少なくないだろう。
しかし、そのように思っている人には、ぜひ本書を読んでもらいたい。技術革新のもたらす変化は、いつ起こるかを正確に予測することは難しいとしても、いつかは起こるものだ。その「いつか」がいつ来てもよいように、私たちは備えていかなければならないのだ。
本書は、雇用社会の未来図を描きながら、その「いつか」に備えて、私たちが自分たちのために、さらに私たちの子や孫の世代のために、何をすべきかを考えるための材料を提供しようとする試みだ。
著者プロフィール
大内伸哉(おおうち しんや)
1963(昭和38)年神戸市生まれ。東京大学法学部卒、同大学院法学政治学研究科博士課程修了。神戸大学大学院法学研究科教授。法学博士。労働法を専攻。著書に『AI時代の働き方と法―2035年の労働法を考える』『雇用社会の25の疑問』ほか多数。
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