「蒙古タンメン中本」“からうま”ブームの真相 激辛に徐々に慣れさせる仕掛けとは?:長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/6 ページ)
セブン‐イレブンの「蒙古タンメン中本 北極ブラック」が人気だ。ラーメンチェーンの蒙古タンメン中本はなぜここまで支持されるのか。同店の歴史から分析してみよう。
なぜ北の地名がメニューに採用されるのか
蒙古タンメンの名称はモンゴルとは直接的な関係がない。寒い土地では辛いものを食べるのではないかというイメージで、中本氏が名付けた。モンゴルというと、世界を制覇しようとしたチンギスハンや、白鵬・朝青龍といった力士のイメージがある。特に、2代目白根氏には「変革者」「一番になる」といった思いが感じられる。この他にも、北極ラーメンという名称には辛さを極めたとの意味合いがある。また、「樺太」という地名が付いた期間限定のメニューなどもある。総じて、札幌のある北海道よりも、北の地域が想定されている。
また、蒙古タンメン中本の道には次のような記述もある。
「初心者が最も混乱するのが注文した後。この店は注文してから出来上がるまで(30分〜1時間半ぐらい)はどこに行ってもいいので、常連は(提供される)時間までどっかに行ってしまいます。初心者から見ればずっと待っているのに後から入ってきた客(実際はすでに注文している常連)に先に料理が出るので『ちょっと、こっちが先じゃないのー!』と怒ってしまうというわけです」
もっとも、こういったエピソードは先代の店の話である。現在の蒙古タンメン中本は、白根氏の手腕によりシステム的に洗練されたラーメンチェーンとなっており、券売機も置いてある。行列に並ばなければならないこともあるが、ラーメンの提供はかなり迅速だ。そのため、初心者だから入りにくい、混乱するということはない。接客も全般に丁寧だ。初心者にとって、ある種のメニューが恐ろしく辛いということを除けば、想定外のことは起こらない。
中国料理中本の常連には、近くにあった城北学園高校や都立大山高校の生徒・OBが多かった。部活の先輩が後輩を誘って来店するというのがよくあるパターンで、新入部員が蒙古タンメンのあまりの辛さに涙して、途中で断念する姿も多々見られたという。ところが、不思議な中毒性があって、しばらくしたらまたチャレンジしたくなり、何回か通っているうちに辛さに次第に慣れて、ついには辛さが極まった北極ラーメンを完食できるまでに育った人もいたという。
現在も、蒙古タンメン中本の辛さに慣れていく過程を登山に例える人もいるほどだ。中本育ち、恐るべし。
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