ネットに接続できなくても、カシオの電子辞書が売れている秘密:水曜インタビュー劇場(客の声公演)(5/6 ページ)
国内の電子辞書は苦戦しているのに、長年にわたって売れ続けている商品がある。カシオ計算機のエクスワードだ。スマホがあれば英単語などの意味を調べることができるのに、なぜカシオの電子辞書は売れているのか。その秘密を聞いたところ……。
「調べたい」と「勉強したい」の声
土肥: カシオの時計で、看板商品といえば「G-SHOCK」。トラックに踏まれても、ビルの屋上から落としても、壊れないことをウリにしていますよね。ちょっと衝撃を加えただけで液晶が壊れるなんて、同じ会社として許されなかったのでは?
上田: そーなんです。液晶が割れることに開発チームは心を痛めましたが、「次は、壊れにくいモノをつくろう」となりました。液晶は押されたり、ひねられたりすることに弱いんですよね。この弱さから守るために、液晶の内側と外側にカバーをつけることに。はさむような形にして、液晶を割れにくい構造にしました。
04年、液晶が割れにくい堅牢設計モデル「XD-L4600」(4万2000円)を発売しました。その後、「部首や画数が分からないので、手書き入力で調べることはできないか」という声があったので、手書き入力機能を搭載することに。「液晶は白黒ではなくて、カラーで見たい」という声があったので、カラーモデルを投入することに。
土肥: 手元の資料を見ると、電子辞書市場でカシオは15年以上シェアトップが続いていますよね。その要因をどのように分析していますか?
上田: お客さんの声を聞いて、改良を重ねてきたことが大きいのかもしれません。先ほどご紹介したように、1号機は万人受けするようなモノでした。その後、商品を展開することで、さまざまなニーズがあることが分かってきました。高校生向けのモデルだけでななく、中学生や小学生向けも開発しました。ちなみに、小学生には高学年と低学年向けに、それぞれ用意しました。
お客さんから「フランス語を勉強したい。電子辞書を出してくれないか」といった声があったので、さまざまな言語に対応したモデルを発売しました。いまではフランス語、ドイツ語、スペイン語/ポルトガル語、イタリア語、ロシア語、中国語、韓国語を出しています。
土肥: 現在、販売しているモデルを数えると、ひー、ふー、みー、よー……25モデルもある。
上田: これまでたくさんのモデルを出してきましたが、新しいタイプを出しても、すべての人のニーズを満たすことは難しいなあと感じています。お客さんから「こうしたモノを出してほしい」という声があれば、できるだけ対応してきました。新しい機能を搭載すると、またお客さんから「こうしたモノを出してほしい」という声があります。
土肥: 最近はどんな声が多いのでしょうか?
上田: 以前は「調べたい」という声が多かったのですが、2010年代に入って「勉強したい」という声が増えてきました。電子辞書を使って、勉強したいという人が増えてきまして、さまざまなことに対応してきました。例えば、受験改革の一環として、いま多くの高校生は英検(実用英語技能検定)を受験しています。こうした背景があるので、電子辞書の中に、試験対策のコンテンツを搭載しました。英単語を覚えるドリルだけではなく、予想問題、過去問題など、本番の試験と同じようにマークテスト方式で勉強できるようにしました。
関連記事
- “売れない魚”の寿司が、なぜ20年も売れ続けているのか
魚のサイズが小さかったり、見た目が悪かったり――。さまざまな理由で市場に出荷されない「未利用魚」を積極的に仕入れ、宅配寿司のネタにしているところがある。しかも、20年も売れ続けていて……。 - 「男女混合フロア」のあるカプセルホテルが、稼働率90%の理由
渋谷駅から徒歩5分ほどのところに、ちょっと変わったカプセルホテルが誕生した。その名は「The Millennials Shibuya」。カプセルホテルといえば安全性などを理由に、男女別フロアを設けるところが多いが、ここは違う。あえて「男女混合フロア」を取り入れているのだ。その狙いは……。 - 「現金お断りの店」は、その後どうなったのか? ロイヤルHDの実験
1年ほど前、東京の日本橋に「現金お断り」のレストランが登場した。ロイヤルホストを運営するロイヤルHDが運営しているわけだが、キャッシュレスにしてどんなことが分かってきたのか。メリットとデメリットを聞いたところ……。 - えっ、盗まれないの? 無人の古本屋は、なぜ営業を続けられるのか
東京の三鷹駅から徒歩15分ほどのところに、無人の古本屋がある。広さ2坪のところに、500冊ほどの本が並んでいるだけ。「誰もいなかったら、本が盗まれるのでは?」と思われたかもしれないが、実際はどうなのか。オーナーに話を聞いたところ……。 - 6畳弱の狭い物件に、住みたい人が殺到している理由
6畳弱の狭い物件が人気を集めていることをご存じだろうか。物件名は「QUQURI(ククリ)」。運営をしているピリタスの社長に、その理由を聞いたところ……。 - なぜ「小僧寿し」は危機に陥ったのか 犯人は“昭和のビジネスモデル”
「小僧寿し」が債務超過に陥った。苦境の背景に「持ち帰り寿司の限界」とか「多角経営が裏目に」といった声が出ているが、本当にそうなのか。筆者の窪田氏は違う見方をしていて……。 - なぜ「翔んで埼玉」はセーフで、「ちょうどいいブス」はアウトなのか
「自虐」を前面に押し出すことで、世間の関心を集める「自虐マーケティング」が盛り上がっている。「じゃあ、ウチもさっそくやってみよう」と思いたったマーケティング担当者がいるかもしれないが、気をつけていただきたいことがある。それは「地雷」があることだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.