日本に凱旋した北米マーケットの大黒柱RAV4:池田直渡「週刊モータージャーナル」(6/6 ページ)
トヨタ自動車の新型RAV4は北米で屋台骨を支える最量販車種。無骨な方向に進化し、大型化して日本に戻ってきた。3種類の四輪駆動方式の違いと特徴はいかに。
だから筆者は、普通の人にはそういう不自然な部分が少ないDTCモデルを勧めたいのだが、一方でDTVモデルはタイヤの能力に余裕がある領域ではすこぶる優れた接地感を発揮し、気持ちよく走る。それも捨てがたい。技術の粋を凝らしてトルクで曲がるAWDを選んで、それをあんまり使うなというのも微妙な話だが、DTVの効果がハッキリ現れるような領域にわざわざ踏み込むのは、お勧めできない。よほど腕に自信があるならともかく、普通の人は日常域での味を楽しんだ方がいい。そしてそこにちゃんと技術の価値が現れている。
RAV4の特筆すべき点は、穴に一輪を落とした状態から、どのモデルであっても普通に脱出できることだ。四輪駆動の宿命として、どこか一輪が浮いてしまうと、駆動力が逃げてしまい、残る三輪がしっかりグリップしていても脱出できなくなる。もっとハードなクロスカントリーモデルならデフロックを装備していて脱出が可能なのだが、普通の生活四駆はそこで身動きが取れなくなる。
その点RAV4は、そういう状況下でも、全てのモデルが何事も無かったように脱出できることは、高く評価できる。「どんな気象条件であろうとも家族を病院まで……」という話はただのお題目ではない。人気の無い場所や、厳しい気象条件で身動きできなくなるというリスクを回避できる性能には価値があると思う。
ボディサイズが許容でき、ちょっとしたアドベンチャーに興味がある人にとって、選択肢になるクルマだろう。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
トヨタ ハイブリッド特許公開の真実
トヨタは、得意とするハイブリッド(HV)技術の特許(2万3740件)を無償で提供する。しかし、なぜ大事な特許を無償公開するのか? トヨタの狙いと、そしてどうしてトヨタが変わらなければいけなかったかと解説する。
上からも下からも攻めるトヨタ
トヨタは2つの発表をした。1つは「KINTO」と呼ばれる「愛車サブスクリプションサービス」。もう1つは販売チャネルの組織改革だ。ここから一体トヨタのどんな戦略が見えてくるのだろうか?
トヨタ、新型「RAV4」発売 3年ぶり復活、国内SUV需要取り込む
トヨタ自動車は新型「RAV4」を発売。日本市場での販売は3年ぶり。米国で成功している主力車種を再投入し、SUV需要の取り込みを狙う。
トヨタ、新型「RAV4」世界初披露へ 日本でも19年春に復活
トヨタは、SUV「RAV4」の新型を米ニューヨーク国際自動車ショーで世界初披露する。
トヨタ社長が強調する「原点回帰」 激変期に打ち出す“トヨタらしさ”とは
トヨタ自動車の2018年3月期決算は売上高、純利益ともに過去最高を更新。一方、豊田章男社長は原点回帰を強調。トヨタ生産方式(TPS)と原価低減で「トヨタらしさを取り戻す」と話した。その真意とは……
