日本に凱旋した北米マーケットの大黒柱RAV4:池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/6 ページ)
トヨタ自動車の新型RAV4は北米で屋台骨を支える最量販車種。無骨な方向に進化し、大型化して日本に戻ってきた。3種類の四輪駆動方式の違いと特徴はいかに。
技術的挑戦
実はこの試乗会に先立って、トヨタの冬季テストコースでも試乗会が行われ、サーキットのように平らにならされた圧雪路でのテストも行っている。DTVとDTCの挙動はここで大きく異なった。基本特性からいえば、DTVは踏んで曲がる。ただし、それは人の身体感覚とちょっと違う、イメージでいえば「敵わない相手に敢えて立ち向かう」という感じ。滑ったら普通は何とかして減速しようとする。ところがDTVは、そこでさらにアクセルを踏むと外側後輪が車体を押し出して回り込む。頭で理解したとしても、とっさの時にそんなことができるかどうかはちょっと別の問題で、おそらくは感覚の補正をしないと使いこなせない。
もう一つ話をややこしくしているのは、最近のトヨタ車に装備が増えているACA(Active Cornering Assist)との兼ね合いだ。この機能は内輪にブレーキをかけてクルマの自転モーメントを作る機能。つまりこれまでのクルマはハンドルを切った時前輪のスリップアングルが増加し、それに応じた横力が発生してクルマの自転(ヨー運動)が始まっていた。
ACAは、その自転を開始するヨー運動を、片輪ブレーキが助け、また加速局面ではDTVがトルクを外側に大きく配分することで補佐する。伝統的には全て舵輪が受け持って来た機能がブレーキやデフに再配分されたのである。問題はそれらがリレー方式につながっていることで、例えばACAがクルマの自転運動を助けようとしているところで、熟練ドライバーが従来通り舵の効きを高めるためにフロント荷重をあげようとブレーキを軽く舐めたりすると、途端にACAはブレーキ操作に上書きされて、片輪制動を止め、両輪制動に移行する。当然ヨー運動はそこで片輪ブレーキの補助を失い、舵角の分だけに戻ってしまう。あるいはDTVで曲がっている途中にどうやっても減速しないと回り込めないほど行く手が巻き込んでいたら、踏んで曲がっているところからのリカバーは難しい。元々が自分の感覚に背いて、システムを信じて踏み込んでいる状態だから、システムの限界を超えたとき、打つ手がないのだ。
こういうものをどう評価するかはとても難しい。これまでできなかったクルマの動きを技術の力で成し遂げようとしているということもできるし、曲がると言う絶対性能は向上している。一方で、場面によっては人の感覚とズレを起こすものを許容していいのかという話にもなる。
そしてそれが、あくまでも限界領域での話だと言う断り書きが付く。そもそも公道でそんな運転はすべきではないが、現実には何らかの弾みで、そういう領域に飛び込んでしまったときに事故が起きるともいえる。
関連記事
- トヨタ ハイブリッド特許公開の真実
トヨタは、得意とするハイブリッド(HV)技術の特許(2万3740件)を無償で提供する。しかし、なぜ大事な特許を無償公開するのか? トヨタの狙いと、そしてどうしてトヨタが変わらなければいけなかったかと解説する。 - 上からも下からも攻めるトヨタ
トヨタは2つの発表をした。1つは「KINTO」と呼ばれる「愛車サブスクリプションサービス」。もう1つは販売チャネルの組織改革だ。ここから一体トヨタのどんな戦略が見えてくるのだろうか? - トヨタ、新型「RAV4」発売 3年ぶり復活、国内SUV需要取り込む
トヨタ自動車は新型「RAV4」を発売。日本市場での販売は3年ぶり。米国で成功している主力車種を再投入し、SUV需要の取り込みを狙う。 - トヨタ、新型「RAV4」世界初披露へ 日本でも19年春に復活
トヨタは、SUV「RAV4」の新型を米ニューヨーク国際自動車ショーで世界初披露する。 - トヨタ社長が強調する「原点回帰」 激変期に打ち出す“トヨタらしさ”とは
トヨタ自動車の2018年3月期決算は売上高、純利益ともに過去最高を更新。一方、豊田章男社長は原点回帰を強調。トヨタ生産方式(TPS)と原価低減で「トヨタらしさを取り戻す」と話した。その真意とは……
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.