海外でも議論噴出 なぜ「高齢ドライバー」の運転を止められないのか:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
東京・池袋で発生した高齢ドライバーによる死亡事故。ドライバーは運転能力低下を認識していたのに、なぜ運転を続けてしまったのか。私たち自身が責任を持って、高齢ドライバーへの向き合い方を考える必要がある。
「自分は大丈夫」「年寄り扱いするな」
これはよく分かる。実は筆者も最近知人からこんな話を聞いたばかりだった。今年に入ってから、認知症気味の75歳を超えた母親に免許を返納させた。というのも、昨年、母親が運転する車の助手席にいた際に、母親が道路を逆走しようとしたのだという。この知人は、「自分は大丈夫」「年寄り扱いするな」「買い物すら行けない」とゴネる母親に、免許を返納させるのに難儀したと語る。「最終的には、ゆっくりと時間をかけて、『自分の孫ほどの子供をひいたりしたらどうするのか』『買い物の際は父親が運転手をする』と諭して納得させた」
筆者は、今回の親子を死亡させた高齢ドライバーのニュースを目にするたびに、この話を思い出した。家族にも責任があるのではないかと。特に高齢者の場合、その家族とは配偶者だけでなく、成人している子供たちも入るだろう。そう、私たち世代に責任があるとも言えるし、もっと言えば、そういう認識が広がる必要があるのかもしれないと感じる。家族がいない人の場合は、高齢者のデータベースを持つ警察や行政がきちんと対応するようにするべきだ。
ちなみにフィリップ殿下も、かなり頑固者として知られ、人の言うことには耳を貸さなかったという。その証拠に、自動車事故後にメディアなどで批判が噴出していたにもかかわらず、すぐ後にまた別の車を運転している姿が捉えられた。だがさすがに、二度目の後は周囲から止められたのだろう。直ちに免許を返納した。
ただ、事故が起きてから運転をやめさせるのでは遅い。他人をけがさせたり、ひき殺してからでは遅すぎるからだ。だが高齢ドライバーに運転をやめさせるのは、世界どこでも簡単ではないということだ。
そこで英デイリーメール紙はこうアドバイスする。高齢ドライバーは「運転によって自立性を維持できている」と言う人が少なくない。さらに地域によっては、車がないと生活がかなり不便になるケースもある。車を手放すとその生活に適応するのは最初は大変だが、家族や友人、医師など周りがサポートすることが不可欠だという。
米NBCニュースのアドバイスはこうだ。やはり周囲が認知症など運転する能力があるのかをチェックすべきで、辺りが暗くなってからの運転を怖がったり、運転しづらそうにしたら、警戒すべきだ。また免許を手放すかどうかの話になれば、決して年齢については触れてはならず、運転技術(判断力など)から話を持っていくべきだという。
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