「角ハイボール」は酒の世界を変えたのか:恐るべし(3/4 ページ)
完全にひとつのジャンルを築いた感があり、ジャンルというか、銘柄というか、メニューのひとしなというか、ひと言では片づけられないところまできた感すらある。 もはやスタンダードともいえる「角ハイボール」状態だ。
ウイスキーに関して、実に不可解な現象がいろいろと起こる。
それでも、角ハイボールの尽力のおかげで、シングルモルトも売れてはいるようだ。
ただし、売り上げの推移を見てもわかるように、ビールの代わりに売れているとしか思えない状況であり、「とりあえずビール」が「とりあえずハイボール」となったとしか思えない。
なので、やっとウイスキーも復権かと思いきやそうでもないようだ。
バブル前、団塊の世代が人生を謳歌していたころは、クラブやスナックで飲む酒は基本的にウイスキーだった。
サントリーでも、ダルマからリザーブ、そしてローヤルと、当時にしては非常に高額な価格で出ていたにもかかわらず、みんなこぞって飲んだものだ。シーバスやジョニ黒などは、高級酒として誰もが憧れた。そのころをピークとすれば、今はその3分の1程度だ。
「角ハイボール」のすごさは、ウイスキーとしてではなく、「ハイボール」として売ったことだ。ウイスキーを楽しませるのではなく、ハイボールを飲ませることに成功した。
この視点のチェンジはすごい。
なまじっかのウイスキー好きは、どうしてもウイスキーの持つ深さやバリエーションを言いたくなってしまう。産地がどう、樽がどう、年数がどう、ボトラーズがどう、誰も聞いていないのに語ってしまうのが難点だ、
そういう人間を相手にしていたら、この超ヒットはなかっただろうし、そこがメジャーになりえないことを悟りきったのだろう。
「角ハイボール」でなければなかったのだ。
しかし今後、この強力すぎるブランドを超えるのは並大抵ではない。
「角ハイボール」のあとも、同じサントリーからは「ジンビーム」、キリンからは「ホワイトホース」が出て好調らしいが、これもまた筋が違うと思う。バーボンがどうの、スコッチがどうの言っているが、残念ながら関係ない。「角」にはかなわない。
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