ホンダの本社ビルに秘められた“本田宗一郎伝説”の謎を追う:どんな設計思想なのか(2/5 ページ)
ホンダの創業者である本田宗一郎氏は本社ビルの設計に関与していた。どのような願いを込めてどんなデザインにしていたのか。社内に伝わる“本田宗一郎伝説”の謎を追う。
誰でも気軽に立ち寄れる場所にしたい
1階は「Honda ウエルカムプラザ青山」という名称になっており、自社製品のショールーム兼イベントスペースとなっている。ウエルカムプラザに足を踏み入れると、ずらりと並んだ2輪車や4輪車が目に飛び込んでくる。記者が取材した4月9日(火)には、外国人観光客の団体が訪れており、子どもが2輪車にまたがって遊んでいる姿を確認できた。
展示スペースの奥にはステージがあり、ホンダの二足歩行ロボット「ASIMO(アシモ)」がさまざまなパフォーマンスを披露している。1日に数回、決まった時間帯にステージに登壇しており、観光客との記念撮影にも応じている。
ステージの横にはカフェスペースがある。コーヒーやジュースなどを1杯200円から提供しており、テーブルではビジネスパーソンや観光客と見られる人たちが思い思いの時間を過ごしていた。この他、公式グッズを販売する店や、安全運転を体験できる設備などがある。ちなみに、ウエルカムプラザは年中無休ではない。
本社の1階で提供される「宗一郎の水」
ウエルカムプラザの隅では、水が無料で提供されている。遠くから見ると、どこにでもある水飲み場のように見えるのだが、近づいてみると「宗一郎の水」と書いてある。ウエルカムプラザと宗一郎の水が存在するのは「(本社を)誰でも気軽に立ち寄れる場所にしたい」と本田宗一郎氏が考えたためだ。
宗一郎の水は地下3階にあるカナダ産のヒバの木でつくられた受水槽から引かれている。一般的なビルは、水道水をステンレス製の受水槽に引き込んでから、各階に供給している。わざわざヒバの木の受水槽を使う理由は、よりおいしい水を提供したいという願いからだ。この受水槽はビルの竣工当時から存在しており、メンテナンスを繰り返しながら使い続けている。宗一郎の水は災害時には社員らの飲料水としても活用される。
88年に作成されたホンダの社内資料はウエルカムプラザを次のように位置付けている。
「若い人たちのモータリゼーションへの夢に応える場、そして社会との情報交流の接点として、お客さまが気軽に立ち寄り、楽しむことができる新しい形のパブリックスペースの創造を目指している」
ウエルカムプラザの展示内容は常に変化している。自社製品を入れ替えるのはもちろん、歴代の名車やモータースポーツに関する展示もしている。
メーカーの本社ビルには、自社の歴史を紹介する展示がされていたり、自社製品が並んいたりするのが一般的だ。しかし、ホンダのように“気合い”の入った展示やイベントを企画している本社ビルは珍しい存在といえよう。
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