ホンダの本社ビルに秘められた“本田宗一郎伝説”の謎を追う:どんな設計思想なのか(3/5 ページ)
ホンダの創業者である本田宗一郎氏は本社ビルの設計に関与していた。どのような願いを込めてどんなデザインにしていたのか。社内に伝わる“本田宗一郎伝説”の謎を追う。
地下に食料や水を備蓄している
災害時の備えについても、本田宗一郎氏の意向が反映されている。
東京都は、災害に備えるために社員用の水や食料を確保するよう条例で定めている。ホンダの本社ビルには海外営業を担当する部門や管理部門などで働く約1200人の社員がおり、3日分の水、食料、ヘルメット、ブランケット、簡易トイレなどを備蓄している。
現在ではこういった備えをするのは当たり前になっているが、ホンダではビルが竣工した85年から水や食料の備蓄をしている。担当者によると、当時では先進的な取り組みだったのではないかという。
本社ビルでは熱源としてガスを使用していない。火災の原因になるものを排除するためだ。では、どのようにして熱源を確保しているのか。本社ビルでは地域熱供給システムを導入している。これは、冷水や温水などを一カ所でまとめて製造・供給するものだ。外部から引き入れた蒸気の熱を利用して、社員食堂で調理をしたり、暖房に利用したりしているという。
割れた窓ガラスの落下を防止するバルコニー
本社ビルの窓の外にはバルコニーがある。2階部分は植え込みのプランターになっているが、3階より上のバルコニーは避難通路として利用するため、何も置いていない。窓から外壁までの幅は1600ミリあり、人が歩ける部分の幅は1200ミリだ。
なぜ、わざわざバルコニーをつけているのか。これは、大地震が発生した際、窓ガラスが割れて落下するのを防ぐためだ。本田宗一郎氏が落下したガラスが歩行者を傷つけてはいけないと考え、当初作成された設計図の修正を命じたという“都市伝説”が存在する。記者はこの話を耳にしたことがあるので、担当者に聞いてみたところ「実際に設計図を修正させたかどうかまでは分かりませんが、バルコニーを設置するように働きかけたという話は社内で伝わっています」と説明した。
関連記事
- 豊洲市場の吉野家が面白い 「時給1500円」に「超少ないメニュー数」
2018年10月に吉野家の1号店は築地から豊洲市場に移転した。他店とは違うユニークな運営がされている。創業精神を受け継ぐお店に行ってみた。 - レゴランドってそんなにひどいの? 家族を連れて行ってみた
「隣接する商業施設からテナントが撤退」「水筒の持ち込み禁止」などのニュースで注目を浴びているレゴランド。ネット上では酷評する声もあるが、実際はどうなのだろうか。記者が家族を連れて遊びに行ってみた。 - 松屋の魅力は券売機!? 人手不足時代に吉野家とすき家が導入しない理由とは
大手牛丼チェーン3社のうち券売機を導入しているのは松屋だけだ。生産性向上の切り札である券売機を吉野家とすき家は導入していない。各社に見解を聞いてみた。 - 「大阪王将」に後れを取っていた「餃子の王将」の業績が復活したワケ
「餃子の王将」を運営する王将フードサービスが復活しつつある。女性向けの新業態店や安価で量を減らしたメニュー開発が奏功したが、本質的な理由はほかにもあるという。どのような戦略を打ち出しているのだろうか。 - ライバルと明暗 栄華を誇った「小僧寿し」だけが大きく苦戦した理由
かつて2300店超を誇った「小僧寿し」だが、近年は回転すしや持ち帰りすしチェーンの猛追で苦戦していた。同じ持ち帰りのチェーンが踏みとどまってるのになぜ小僧寿しだけ苦戦しているのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.