宇宙で野菜や培養肉を地産地消!? プロジェクト「Space Food X」に迫る:宇宙ビジネスの新潮流(1/4 ページ)
宇宙で食料の地産地消も視野に入れた官民のプロジェクト「Space Food X」が始動。日本ならではの戦略とは。
3月末、世界でも類を見ない「宇宙食料マーケット」の創出を目指すSpace Food Xというプログラムが都内で立ち上がった。JAXA(宇宙航空研究開発機構)を含む30以上の企業、大学、研究機関等が参加。「培養肉」など宇宙で食料を地産地消できる技術の開発も視野に入れている。
今回は、Space Food Xの代表で本活動を推進するベンチャーキャピタル(VC)、リアルテックファンド所属の小正瑞季氏、副代表でJAXA所属の菊池優太氏、宇宙での食肉生産を推進するベンチャーであるインテグリカルチャー(東京都新宿区)CEOの羽生雄毅氏に、宇宙食の進化と可能性について聞いた。
地上の食糧問題解決も視野に
――Space Food Xとは何でしょうか?
小正: Space food Xは世界初の宇宙食料マーケット創出を目指す産学官の共創プログラムです。2040年には月に1000人が住むといわれ、遅かれ早かれ宇宙空間で人々が暮らす時代が来ると思います。それに伴い、食料に関しても数千億円規模の市場になる可能性があります。また、宇宙のみならず地上においても食料課題はSDGs(持続可能な開発目標)の観点からも注目が高まっています。
日本が誇る世界有数の食文化やさまざまなフードテックに新たな事業モデルを組み合わせることで、宇宙のみならず地上の食料問題解決に取り組み、持続可能性のある社会を実現することを目指してSpace Food Xを立ち上げました。多くの人々に賛同してもらい、初期メンバーとして多種多様な30以上の企業・大学・研究機関・有識者が参加しています。
――宇宙の中でも食に着目した背景は何でしょうか?
小正: 私自身、宇宙に行きたいという気持ちが原点にあったこともあり、これまで投資活動を通じて宇宙ビジネスに携わってきました。昨今のトレンドの中でも十分な優位性を発揮できる分野として、まずはレーダー衛星、月面輸送、ロボティクスなどの分野に投資をしてきたのですが、17年の後半ごろから次の勝てる分野の探索を始めました。宇宙旅行の実現を目指す米Blue Originや米Virgin Galacticといった企業に対する期待感が、現実味と熱を帯び始めた時期とちょうど重なっています。
他方、宇宙と関係なしに食のイノベーションであるフードテック領域への投資熱は15年くらいから急速に高まっていました。日本でも国際的に競争力が高い食料生産技術を持つベンチャーを見ていく中で、宇宙領域とフードテック領域を掛け合わせた結果、宇宙での衣食住というテーマを考え付きました。同時期に参加した宇宙関係者が集まる勉強会でも宇宙での食料生産が話題で、そうした経緯から今回のプログラム立ち上げに至ります。
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