トヨタとJAXAの宇宙探査、「月」を選んだ背景:宇宙ビジネスの新潮流(1/3 ページ)
JAXAとトヨタ自動車が国際宇宙探査ミッションでの協業の可能性を検討。2018年5月より共同検討してきた燃料電池技術を用いた月面での有人探査活動に必要なモビリティ「有人与圧ローバー」の検討を進めていくという。
トヨタとJAXAが宇宙探査で連携
宇宙航空研究開発機構(JAXA)とトヨタ自動車は国際宇宙探査ミッションでの協業の可能性を検討する。3月12日にその合意を発表した。2018年5月より共同検討してきた燃料電池技術を用いた月面での有人探査活動に必要なモビリティ「有人与圧ローバー」の検討を進めていくという。
両社の発表によると、ローバーは全長6メートル、全幅5.2メートル、全高3.8メートルとマイクロバス2台分ほどの大きさがあり、宇宙飛行士が2人滞在可能な空間を持つ。水素と酸素を満充電することで1000km走行可能だ。さらにはトヨタがこれまで培ってきた自動運転技術や人工知能技術なども貢献できるという。
トータル走行距離は1万キロを想定
注目を集めたのは動力源として想定している燃料電池だ。今回は酸素と水素を地球から持参する予定とのことだが、他方で将来的には地産地消を考えている。月に眠る水資源の利活用が昨今話題を呼んでいるが、いずれは水資源を電気分解し、それをもとに燃料電池で発電を行うということだ。
実際の運用は29年から34年を想定。2台の有人与圧ローバーをタンデム運用するという。5カ所が探査領域として挙がっているが、国際的に建設計画が進む月周回軌道上の居住拠点「Gateway」とも連携して、探査領域は都度有人走行を行い、探査領域間は無人走行をするという。トータルでの走行距離は1万キロに及ぶ。
今回の発表には昨今の宇宙産業を取り巻く時代背景を感じる。1つ目は宇宙探査への異業種関連技術の利活用という観点、2つ目は政府系宇宙機関と民間企業による協力という観点、3つ目が、今回の協業の第一段として想定されているのが月探査である点だ。
関連記事
- メルカリが宇宙分野に参入する理由
フリマアプリを運営するメルカリの名を知らない人は少ないだろうが、同社の研究開発部門が宇宙分野で取り組みを進めていることはご存じだろうか? この宇宙プロジェクトをリードする大堂さんに話を聞いた。 - 月の裏側着陸は人類初! グイグイ加速する中国の宇宙戦略
新年早々のビッグニュースだ。1月3日、中国の無人探査機が人類史上初めて月の裏側に着陸成功した。今回は、躍進する中国の国家宇宙開発、急増する宇宙ベンチャーの動向を紹介したい。 - 月旅行だけではない、話題の宇宙の旅、三大メニューとは?
米SpaceXのイーロン・マスクCEOが、2023年に同社が計画する大型ロケットBFRによる世界初の商業月周回旅行の乗客として、ZOZOの前澤友作CEOと契約したことを発表した。今回は、注目を集める宇宙旅行の現状を紹介したい。 - ジェフ・ベゾスはなぜ月を目指すのか?
ロケット開発を進める米Blue Originの創業者、ジェフ・ベゾス氏は、「人類は月に戻るべきだ。そして今回は滞在しなければならない」として、月に人類の恒久的拠点を築くことを目指している。 - 人類は再び月へ 発表されたNASAの予算案とは?
米国連邦政府の予算教書で、NASAの今後の計画が見えてきた。今回は2022年から始まる月周回軌道上の居住基地建設、23年の有人月近傍ミッションなど目玉となるプロジェクトを紹介したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.