わたし、定時で帰れるの? 残業を強制できるラインはどこか:専門家のイロメガネ(2/4 ページ)
ドラマ『わたし、定時で帰ります。』が話題になる背景には、多くの人にとって定時で帰れず残業が当たり前の状況があります。本来、残業をせずに定時で帰っていいラインとはどこにあるのでしょうか?
書面のどこを見たらいいの?
残業せずに定時で帰れるのかチェックするポイントは大きく分けて3つあります。
- 36協定の範囲内の残業か
- 個別の労働条件はどうなっているか
- 会社の残業ルールはどうなっているか
1. 36協定の範囲内の残業か
36協定には1日・1カ月・1年の単位で残業させることができる時間の上限が書かれています。
一般的には月45時間、年間360時間を超えて残業をさせることはできません。ただし、特別条項をつけて協定を結んでいる会社は、臨時的な特別の事情がある場合に、年に6回まで月45時間、年間360時間の範囲を超えて残業をさせることができます。つまり「毎月45時間以上残業しているよ!」というのは原則として法違反です。
残業時間が協定の上限を超えている場合や、そもそも36協定がない状況で残業をさせることはできません。法的には定時で帰ってよいことになります。ただ、小さい会社では適切に運用されていないケースも少なくありません。「自分の残業上限を確認したいのですが」といったように、まずは話し合うのが現実的でしょう。
2. 個別の労働条件はどうなっているか
残業に関する個別の労働条件は、労働条件通知書でチェックすることができます。チェックするポイントは「所定時間外労働の有無」と「始業・終業の時刻、変形労働制の適用について」の2つ。
「所定時間外労働の有無」の欄が「有」となっていたら、基本的に残業を拒否することはできません。36協定の範囲で残業を命じられたら対応するという契約です。契約社員などは「無」のケースもあるので確認しておきましょう。
「始業・終業の時刻、変形労働制の適用について」では、どこからが残業となるのかを確認します。法律の原則では、1日8時間、1週間で40時間を超えて働くと残業となります。ところが、変形労働時間制の場合はこの算定ルールが変わります。
例えば1日10時間の勤務だった場合。原則であれば8時間を超えた2時間は残業ということになりますが、1カ月単位の変形労働時間制が適用されていて、労働時間の総枠内で事前にシフトを決めて適切に運用されていれば、10時間働いても残業にはなりません。
なお、一定の要件を満たした管理職(管理監督者)や裁量労働制で契約している場合、労働時間管理は労働者自身で行います。適切に運用されていれば前述したような残業のルールは適用されません。
私は大学生の時にチェーン店の居酒屋でアルバイトをしていましたが、正社員は朝5時に店を閉めてレジのお金を銀行の夜間金庫に預けてから帰り、その日の昼には仕込みに来ることもありました。勤務が続くと顔色が悪く、栄養ドリンクを飲んで休憩時間は個室で横になるような酷い状況です。
正社員だから仕方ないのかと思っていましたが、社会保険労務士になってから当時を振り返ると、「あの人は労働契約上、そこまで働かないといけなかったのか?」と疑問に思うように。
残業代についても、もしかしたら店長や管理職は残業代がもらえないといった条件で働いていた可能性もありますが、管理職=残業代不要という運用は適切な運用とはいえません。「名ばかり店長」といわれることもありますが、労働時間の裁量がなく一般の従業員と同じように働いていれば会社側は残業代を支払う義務があります。
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