ディズニー、Hulu…… 動画配信の覇権争いは日本アニメをどう変えるか:ジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る(6/7 ページ)
覇権争いを激化させる映像配信プラットフォームの巨人たち。日本アニメにどんな影響を与えるか。アニメ・映像ビジネス報道の第一人者が斬る。
ハリウッド勢参入で日本アニメはどうなる?
米国のエンタテイメントの巨大企業は、ディズニーだけでない。他の企業もNetflix、Amazonに対抗する姿勢は似たような物だ。今後は他社の参入も予想されるが、さらに対ディズニー戦略も必要になる。
そのなかで有力プレイヤーとなりそうなのが、ワーナーメディアだろう。こちらもきっかけはM&Aである。18年に通信会社AT&Tと経営統合したことで、資本力とネットワークを一気に拡大した。映像プラットフォーム戦略は今後明らかになるが、すでに定額課金見放題サービスへの参入は18年暮れに表明済みである。
日本アニメに限れば、ディズニーよりはるかに日本で大きい存在感を持つのがワーナー ブラザース ジャパンである。同社は100%米国出資だが、10年代より数多くのテレビアニメ、劇場アニメの製作に参加してきた。『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズや『キャプテン翼』などいかにも日本的な作品が多い。
さらに18年の経営統合で、ワーナーメディアには世界最大規模となる日本アニメのグローバル映像配信プラットフォーム「クランチロール」が加わった。もともと日本アニメが強いワーナージャパンとクランチロールが協力すればさらに大きな力を発揮するはずだ。オリジナルアニメの余地も十分だろう。
しかもワーナーメディアには、日本アニメの放送に積極的なケーブル局「アダルトスイム」もある。テレビ、配信、日本での製作がつながることで、川上から川下までグローバル規模で多角的なウィンドウが実現する。グループの本丸である劇場配給までが一緒になれば言うことはない。
既に日米のワーナーの協力で、18年に長編アニメ『ニンジャバットマン』が製作されて手堅いヒットになっている。さらにクランチロールとアダルトスイムの協力で、ワーナー・ブラザースの劇場映画『ブレードランナー 2049』の日本アニメ版『ブレードランナー』の製作も発表されている。日本のアニメスタジオSola Digital Arts が製作、監督はNetflixオリジナルアニメ『ULTRAMAN』を作り上げたばかりの神山健治氏と荒牧伸志氏。日本アニメへの戦略的な投資はディズニーより可能性がかなり高い。
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