日清食品HDの知られざる「IT革命」とは? 変革の立役者に直撃:武闘派CIOに聞く、令和ニッポンの働き方改革【前編】(4/4 ページ)
40年間使い続けた古いシステムを撤廃、ビジネスの課題を解決できるIT部門へ――。そんな大きな変革プロジェクトでIT賞を受賞したのが日清食品ホールディングスだ。2013年、CIO(chief information officer)に就任した喜多羅滋夫氏は、どんな方法で昔ながらのIT部門を“戦う集団”に変えたのか。プロジェクトの舞台裏に迫った。
バイモーダルは「人の可能性を芽をつむ」恐れも
―― 昨今のIT部門では、バイモーダル戦略(IT部門を“攻め”と“守り”に2分化する戦略)を採用するところも増えていますが、それについてはどうお考えですか。
喜多羅氏 私は「全員、一緒にイノベーションの船に乗っていくんだ」という考えなので、社内でバイモーダルの話は一切していません。その理由は、「バイモーダル」と言った瞬間に、「それなら、もういいや」と後ろに下がってしまう人が絶対に出てくるからです。それではダメなんです。
―― 人の可能性の芽をつむ恐れがあると。
そうです。IT部門の業務は、「ここは攻め、ここは守り」という話ではないと思っているからこそ、「攻めのIT、守りのIT」という言葉は好きじゃない。「守りは守りでしっかりやる」なんて言い出したら、守りが好きな人は守っちゃうわけです。結果として、「守り」はいるけれども、あまり「守り」に手をかけない組織を作り、より多くのリソースを「攻め」に持って行く方法を考えるのが、われわれのミッションなのです。
私自身は「攻めてなんぼ」だと思っています。あの、イチローですら生涯打率が3割ちょっとですから、7割近くも失敗していることになります(笑)、打率を上げながらクリーンヒットを打っていくためには、いろいろなことをやっていかなければならない。
日清食品HDには、この会社が好きで入社して、長年勤め上げている人も多い。IT部門には、新しいスキルセットを入れるために中途採用もしていますが、昔からいる人たちにも一緒に成長してもらい、一丸となって攻めていくことのできる組織を作り上げることが、私の仕事だと考えています。
【後編に続く】
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