関東圏の私鉄は「特急大競争」時代に突入した 各社の考え方:乗りたい・行きたい(1/4 ページ)
関東圏の私鉄各社が、観光地への誘致と、その際の列車利用をうながすため、新車に力を入れている。そんな各社の新車と、その背景にある考え方について、評価してみたい。
この春、西武鉄道では特急車両001系「Laview」がデビューした。先頭部の印象的な半球形の車体と、足元まで広がる大きな窓が評判を呼び、人気の高い車両となっている。
近年、有料特急を走らせている各社では新型車両の導入が相次ぐ。2018年には小田急電鉄でロマンスカーに70000形「GSE」が投入され、17年には東武鉄道で500系「リバティ」が投入された。
関東圏の私鉄各社が、観光地への誘致と、その際の列車利用をうながすため、新車に力を入れている。旅の楽しみを高めるために、「せっかくなので新車に乗ろう」といった人が多いと思われる。そんな各社の新車と、その背景にある各社の考え方について、評価してみたい。
西武特急「Laview」は秩父観光の切り札
秩父への観光ルートをめぐる競争は、一層激しくなっている。従来からの西武特急に加え、秩父鉄道のSL列車「パレオエクスプレス」も人気が高く、熊谷まで新幹線か在来線グリーン車で行けば、SL列車に乗れるので利便性も確保している。さらに秩父への観光ルートには東武東上線も使用されており、これらを合わせると複数のルートが競合していることになる。
そんな中で西武鉄道は、「西武秩父駅前温泉 祭の湯」を17年4月に開業した。秩父を楽しんだ人が、立ち寄り湯で体を休め、おいしいものを食べてお土産を買い、帰りには西武秩父駅から特急に乗ってもらおうという考え方だ。
以前は「西武秩父仲見世通り」というものがあり、ここに飲食店やお土産店があったものの、いまの施設をつくることで集客能力を高め、西武鉄道をより利用してもらえるようにした。
西武秩父駅のすぐ近くには、秩父鉄道のお花畑駅がある。SLや秩父観光を楽しんだ後、西武鉄道に乗り換えれば都心に直行でき、さらには西武秩父駅の施設にて疲れをいやしたり、おいしいものを食べたりすることができる、という仕組みになっている。
そんな西武鉄道の秩父観光を、「Laview」はさらに強化するものとなるだろう。秩父へ向かう列車では広い窓から西武秩父線沿線の渓谷風景を味わうことができ、秩父から帰る列車はゆったりとした座席で疲れをいやすことができる。また秩父エリアからのビジネス利用には、大型のテーブルやコンセント、Wi-Fiなどが役に立つ。そういった意味で「Laview」は、よく考え抜かれた列車である。
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