「ハイボール 1杯50円」で、どうやって儲けているのか 鶏ヤローのカラクリ:水曜インタビュー劇場(激安公演)(4/5 ページ)
首都圏の繁華街を歩いていると、「角ハイボール 50円」と書かれた看板を目にするようになった。激安の雰囲気が漂うこの店は、どのような特徴があるのか。運営会社の社長さんに話を聞いたところ……。
鮭から鶏に変えた事情
土肥: 「ハイボール50円」は鮭ヤローで生まれたわけですが、現在鮭ヤローは1店しかないですよね。なぜ、鮭から鶏に変わったのでしょうか?
和田: 鮭ヤローは埼玉の獨協大学の近く、千葉大学の近くなどに出店しました。いずれも売り上げは順調に伸びていて、3店目をどうするかといった話になりました。いろいろな意見が出てきたなかで、「鮭ではなく鶏はどうか」という声がありました。
ただ、店の中で働いていると、なにがウケているのかよく分からなくなっていたんですよね。ハイボール50円がウケているのかもしれないし、接客のよさがウケているのかもしれないし、立地のよさがウケているのかもしれない。いや、ひょっとしたら鮭がウケているのかもしれないと。
そもそもなぜフードのメインを鮭にしたのかというと、私が大好きだから(苦笑)。ただ、今日何を食べる? となったときに「じゃあ、鮭にしようか」といった会話ってほとんどないですよね。オーナーのいらないこだわりが店をつぶすのではないかと考え、メインを鶏にしました。
鶏をメインにするメリットは2つ。1つは原価率が安くなること。2つめは料理が楽になること。魚をさばくことよりも、鶏を調理するほうが楽なんですよね。価格とオペレーションのことを考え、鶏で勝負することに。
土肥: 2014年、西葛西に鶏ヤロー1号店をオープンし、売り上げを伸ばしていく。飲食業界では家賃の10倍売れれば、「まずまず」と言われているなかで、鶏ヤローは20倍以上のところが多いそうで。繁盛していることはいいことだと思うのですが、ハイボール50円で利益はきちんと確保できているのでしょうか?
和田: 問題ございません。一般的な飲食店の売り上げ構成比はどうなっているのか。フード7割に対して、ドリンクは3割なんですよね。一方の鶏ヤローは、フード3割で、ドリンク7割。逆転していることに、何の意味があるのか。飲食店の原価率は、フード50%、ドリンク30%と言われているので、利益を確保できるんです。
土肥: えーと、えーと。数字がたくさん出てきました。
和田: 一般的な居酒屋の場合、ドリンクは1人当たり3杯ほど出ていると思うのですが、鶏ヤローの場合は7杯ほど。全20店で、ハイボールはどのくらい出ているのか。月に5〜6万杯出ている。つまり、トータルで原価率を抑えて、薄利多売で収益を確保しているんですよね。
鶏ヤローの場合、フードの原価率はもう少し抑えることができます。ただ、おいしくなかったら、お客さんから「やっぱり、安いからなあ」と思われてしまう。安かろう悪かろうではいけないので、調味料のグレードをあげています。原価が安くても味つけを工夫すれば、お客さんも喜んでいただけるのではないでしょうか。
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