第2ステージに向かう日本のFinTech 顧客起点に立てるかがカギ(2/2 ページ)
FinTechへの投資額が加速している。アクセンチュアの発表によると、2018年のFinTechベンチャーへの投資額は、全世界で前年比2倍の553億ドル(約6兆円)。国内でも前年比5倍以上の5億4300万ドル(約590億円)へと伸びた。しかし国内のFinTechが進展するかどうかは、顧客起点に立てるかどうかにかかっている。
日本は、まだ中国の30分の1、米国の50分の1
とはいえ、「額でいうと、まだ中国の30分の1、米国の50分の1。日本では大手金融機関がスタートアップと組むのが苦手なのではないか」とアクセンチュア金融サービス本部の中野将志統括本部長は指摘する。
背景には、なかなか変われない既存金融機関の意識がある。金融機関は規制に守られた中で、業界の論理でサービスを提供してきた。一方で、昨今参入が続く通信キャリアや通販サイト運営大手など非金融系企業は、スタートアップと連携して顧客起点のサービスを提供し始めている。
「顧客目線が必要だという考え方になってきたのが6〜7年前。企業の課題解決とは、結局企業利益を追求すること。売り上げを上げよう、コストを下げようという方向に行きがちだ。一方で顧客課題の解決というのは、お客さんは何に本当は悩んでいるのか? を見る。住宅ローンでいえば、ローンに不安があるのか住宅自体に悩んでいるのかを見極めて対応するのが顧客目線だが、金融機関の企業目線では、このお客さんはいいお客さんかどうかばかりを見てしまう。企業目線と顧客目線は似ているが違う」(中野氏)
もちろん、金融機関のトップは「デジタル化を進めるべきだ」「顧客目線でやるべきだ」という意識でいる。しかし、現場に降りていく中でスローダウンしてしまうのが実態だ。デジタル化など大きな変革は、効果が現れるのに数年がかかる。ところが、現場は目先の利益目標を優先してしまう。今年の目標に貢献しない限り、デジタル化の優先順位は上がらないというのが現実だ。
日本は、誰でも銀行口座を持っており、ATMなども整備され、FinTechなどが進まなくても、「金融関係ではすでに便利な国だ」という見方もある。しかし「このペースで中国などが進んでくると、便利さでも先に行かれてしまうのではないか」と、中野氏は警鐘を鳴らした。
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