日本発の“AIブレスト”は、世界の「ムダな会議」を変えるか:世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)
日本だけでなく、世界の企業で「無駄な会議」が指摘されている。そんな重苦しい会議シーンを一変させるかもしれないサービスを日本企業が開発した。AIを活用した「ブレストサービス」とは、どのような技術なのか。
主婦や作詞家の「アタマで考える」機能も
つまり、私たちが自分たちでは想像できないような意外な言葉の接着を提供してくれるのである。そんなAIによる「ブレスト」から出てきた発想を私たちが拾って、企画やアイデアなどにつなげていくことができる。また逆に、関連語の連なりの先に行けば行くほど関連性は低くなるが、実はそこにこそ「ブルーオーシャン」がある。ブルーオーシャンとは、他の誰も思い付かないような、独自の斬新な企画や言葉のことを指す。
このAIブレストスパークは、AI技術に「博報堂発想支援メソッド」と呼ばれる、博報堂が実践している発想法や打ち合わせノウハウを組み合わせて作られている。博報堂は、ぐちゃぐちゃにしたアイデアから独自の新しい価値を発見しようとしたり、従来の延長線上にない答えにたどり着こうとしてきた。それをAIのクラウドサービスで利用できてしまうという。
現在はオープンβ版の提供が始まっているが、7月1日からは正式版の販売が開始されるという。月額基本料金は1ユーザーあたり税別7500円の予定(6月30日までは無料)。また現在のバージョンから、今後はさらに機能も追加されていくことになる。例えば、他人になって言葉の広がりを体験できる「他人のアタマで考える」というサービスも7月から実装される。作詞家やビジネスパーソン、主婦といった人たちの視座に立って、言葉をつないでいくことが可能になる。主婦のアタマで物事を見れば、ビジネスパーソンの発想は格段に広がるはずだ。
このAIマシンによるブレストを活用するアイデアは、日本だけでなく、やはり非効率な会議に嫌気がさしている人が多い欧米諸国でも活躍するのではないだろうか。日本出身のAIブレストスパークが、世界の無駄な会議を一掃する――。そんな日が来るかもしれない。
筆者プロフィール:
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト・ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最近はテレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
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