“サブスク”で伝統工芸と飲食店をつなげる 新サービスが生まれた理由:個性的な器をレンタル(2/2 ページ)
伝統工芸品の食器を月額制で利用できる、飲食店向けサブスクリプションサービス「Craftal」。サービス誕生の背景には、飲食店と工芸品の産地、それぞれが抱える課題があった。両者をつなげることを目指す立ち上げ人に、狙いと展望を聞いた。
飲食店と職人をつなげるメリット
クラフタルのサービスの開発には、飲食店と工芸品の作り手、それぞれが抱える課題が背景にある。
飲食店、特に客単価1万円を超えるような高級店では、料理を引き立てる、高品質の食器の需要がある。しかし、「いいものを使いたいけど、どこで買えばいいか分からない」「いろいろな種類の食器を買おうとすると、コストがかさんでしまう」といった悩みを抱える店も多いという。
また、季節の料理には、季節感のある柄や素材などを使った食器を使いたいものの、そのような食器は「使わない期間」が長い。使わない時期に保管しておくスペースが必要になるため、購入のハードルは高くなってしまう。そんな店にも「使う時期だけ借りる」ニーズがあるという。
一方、伝統工芸品の作り手の課題も大きい。市場縮小によって、伝統的な技術に触れる機会も少なくなっている。伝統工芸品の利用機会を少しでも広げることで、品物の“味”や職人の個性などを知ってもらうきっかけが増える。
通常、卸売事業者が食器の商品を取り扱うことから、「作り手側は、どんな店でどのように使われているか分からない」状態だという。クラフタルを通じて、店舗からのニーズや使用した感想などを知る機会も提供する。「食器の生産者とお店が一緒になってメニューを開発する、といったことも実現できれば」と浦田さんは意気込む。
海外発信の“窓口”に
2020年3月までに20店への導入を目指す。すでに導入した和食店「割烹TAJIMA」(東京都渋谷区)の田島和彦料理長は、「器にはこだわっているが、急に量を増やすことは難しい。いいものを効率よく回転させられれば」と期待する。また、工芸品に精通しているプロが選んだ食器を導入することで、「器に込められたストーリーを知ることができる。その知識をお客さまにも伝えたい」と話す。
今後は、伝統工芸品の海外展開を後押しすることも視野に入れる。まずは和食だけでなく、国内の洋食店にも食器を使ってもらい、意見や感想をもらうことで、海外の料理に合う食器の商品開発につなげる。そして、その商品を海外に発信し、日本の工芸品を取り入れてもらうきっかけを作りたいという。浦田さんは「日本の工芸品の良さを伝える窓口になれれば」と話している。
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