ソニーが「新卒に年収730万円」、最大のカベは中高年社員の嫉妬!?: “いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
ソニーが新卒に最大で初任給730万円を支払う。高度人材を確保するためだが、中高年社員の反発など背景には日本企業の本質的な課題が。
ソニーがエリート新卒を獲得できるかは“微妙”?
ユニクロを展開するファーストリテイリングは、20年春に入社する新入社員から、年収を2割引き上げると決定している。同社は海外からも人材を広く募集しているが、大卒初任給は21万円であり、国際的に見るとかなり低い。このままの水準では、海外から良い人材を集められないというのが給与改定の理由だが、それでも諸外国の企業と比較するとまだまだである。
ソニーの場合、金額的には730万円なので、それなりのレベルということになるが、注意すべきなのは、この年収を出すのはAI(人工知能)など極めて高い技術を持った人材に限定されているという点である。AIなどの技術を身につけた高度人材の場合、グローバルではさらに高い賃金が提示されるケースが多いので、ソニーがこの金額で優秀な社員を確保できるのかは微妙なところだ。
さらに言えば、こうした技術系社員の場合、年収に加えて、職場の環境を極めて重視する傾向が強い。日本では、著名なIT企業であっても、事務仕事もスムーズに進められないほどの非力なPCしか技術者に供与しないなど、職場環境に問題があるケースが多い。
18年、メルカリの社内環境がネット上で話題になったことがあった。同社では、社員が希望すれば、どんなスペックのPCでも自由に使うことができ、ディスプレイも必要なら2台並べて使うことも可能だという。この社内環境が大きな話題になったということは、裏を返せば、国際的に見れば貧弱な環境しか社員に付与していない日本企業が多いことを物語っている。
どれだけ高い年収を提示しても、自由な環境で開発ができないと技術者のモチベーションは下がる。こうしたところまで配慮ができている日本企業は少数派だろう。
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