見知らぬ客同士に会話させたら店員の評価UP!? 立ち飲みチェーンの狙いとは:ユニークな人事評価制度の全容とは(1/6 ページ)
名古屋発の立ち飲みチェーンがユニークな人事評価制度を導入している。見知らぬ客同士に会話を成立させたら評価がアップする。どういった狙いがあるのか。
令和時代に稼ぐ企業はここが違う:
「売り上げが急速に増えている」「同業他社と比べ利益率が高い」「新事業が好調」――平成から令和に突入する中で、時代の変化に対応できそうな企業の強さの秘密を決算書の数字やビジネスモデルを踏まえながら迫る。
客と客の間で会話が発生するように仕向けることで、店員の人事評価がアップする仕組みを導入している立ち飲みチェーンがある。例えば、カウンターの内側にいる店員と、並んで立っている客A・客Bに以下のようなやりとりが発生することを想定している。
店員: 「これ、今月の新メニューですが、いかがですか? そういえば、お隣にいるAさんはすでに召し上がりましたよね。味はどうでしたか?」
客A: 「結構、いけましたよ」
客B: 「そうなんですね。じゃあ、私も注文してみようかな」
この人事評価制度を導入しているのは光フードサービス(名古屋市)だ。創業者の大谷光徳社長は老舗の焼き肉チェーン店で働いた後、2008年に「立呑み焼きとん大黒 住吉店」(名古屋市)をオープンした。同社は、焼きとん大黒だけでなく「立呑み 魚椿」や「横浜家系ラーメン 金山家」など、計35店舗を運営している(19年6月時点)。
同社は店舗ごとの売り上げや利益はもちろん重要視しているのだが、店員と客の間のコミュニケーションが促進されるような人事評価制度を取り入れている。客と店員の強固なコミュニティーを作り上げた結果、既存店売上高(昨対比)は60カ月連続で伸び続けているという。背景にあるのは常連客のリピート率向上だ。
なぜ、このようなユニークな人事評価制度を導入しているのだろうか。
焼きとん大黒のビジネスモデル
焼きとん大黒は立ち飲みスタイルとなっており、豚や牛のもつを客の目の前で焼き、提供している。出店コンセプトは「駅前10坪の立ち飲み屋」で、平均客単価は2000円だ。角ハイボール1杯、串焼き4本盛、おまけの1品をセットにした「せんべろ」コースを打ち出している店舗もある。創業の地である名古屋では、「手羽先といえば『世界の山ちゃん』」「みそカツといえば『矢場とん』」「ひつまぶしといえば『あつた蓬莱軒』」というブランドが定着している。そこで、「立ち飲みといえば焼きとん大黒」というポジションを獲得することを目指している。
こうしたビジネスモデルを採用しているのには理由がある。大谷社長は開業資金に余裕がなかったため、小さな店から始めざるを得なかったという。ただ、前職で肉の仕入れに関わっていたこともあり、安くてうまい肉を提供する自信はあった。そこで、立ち飲み店をオープンした当初から「この肉は入荷したてでおいしいですよ」といったように、客と積極的にコミュニケーションをとっていた。また、「個室」「大箱」「空中階(2階以上)」といったタイプの店舗運営はもともとやりたいことではなかったという。小規模な店で客と強固なコミュニティーが形成できれば、競合店に負けないという自信があった。そして、大谷社長は店長や店員に対して客との接点を積極的に持つよう促すことにした。
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