「妻がボス」で、夫婦のもめ事が激減 ノバルティスファーマ社長の「子育て経営学」とは:子育て経営学(1/3 ページ)
大企業や伝統的な企業で働く男性たちが子育てに参加できる環境をつくるにはどうすればよいのか?
この記事は、宮本恵理子氏の著書『子育て経営学 気鋭のビジネスリーダーたちはわが子をどう育てているのか』(日経BP刊)より転載、編集しています。
気鋭のビジネスリーダーたちは、わが子をどう育てているのか――。そんなテーマで旬の経営者やプロフェッショナル10人の子育て事情に迫ったのが、宮本恵理子氏の著書「子育て経営学」だ。
本記事は、同書籍の中からノバルティスファーマ社長、網場一成氏の子育て術を紹介。前編に続いて後編では、「経営で学んだことはどのように育児に生かせるのか」「男性の育休取得率を上げるためにできることは何か」といったテーマで話を聞いた。
綱場一成(つなば かずなり)ノバルティスファーマ社長。1971年広島県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業後、米デューク大学大学院にてMBA(経営学修士号)取得。総合商社勤務を経て、米イーライリリーでセールス、マーケティングに従事。同社日本法人営業所長、プロダクトマネジャーなど歴任し、2009年に同社香港法人社長に就任。同社日本法人糖尿病事業本部長、同社米国本社グローバルマーケティングリーダー、オーストラリア・ニュージーランド法人社長を経て、2017年4月から現職。
運動を通して組織を率いるスキルを磨く
―― 語学教育と同じようにスポーツを重視しているとのことですが、その意図は。
綱場氏 私が身を置く環境が特にそうなのかもしれませんが、組織でリーダーシップを発揮する人の一つの共通点が、競技スポーツ経験者だという印象があるのです。
当社のグローバル前CEO(最高経営責任者)は水泳で五輪出場を期待されるほどの選手でしたし、今のグローバルCEOも、大学バスケットボールに本格的に打ち込んでいたと聞いています。
私自身も空手をやっていて、実は香港法人社長を務めていた39歳の時、部下にたきつけられて、ボディービルの大会に出場したこともあります(笑)。
運動経験は、努力して成果を出してきたという自信につながりますし、チームワークとも直結する。勉強も大事ですが、それだけで組織を率いるスキルを磨くのは、限界があります。
製薬業界の営業職、MR(医薬情報担当者)で活躍する人材の共通項を分析した調査では、「体育会系クラブのキャプテン経験がある」という項目も抽出されたそうです。こういった調査結果を知ると、やはり幼少期から運動に触れさせたいと思うわけです。つい、“エビデンス・ファースト”で子育てを考えてしまうのは、職業柄ですね(笑)。
―― 綱場さんがここまで子育てに関わるきっかけとなった原体験は何でしょう。
綱場氏 やっぱり子どもはかわいいですよね。それに、私も両親から大切に育ててもらいました。
親父とお袋はいつも子どもに寄り添って、私と弟、妹の3人に愛情を注いでくれました。私は小学校低学年まで引きつけを起こしやすい体質でした。けいれんを起こすと、舌をかまないように割り箸やタオルをくわえさせることが、当時は一般的でした。ある時、親父は、「切れても構わない」と、私の口に自分の指を入れたことがあったんです。小学1年生で上級生にいじめられた時は、すっ飛んできて相手の家に怒鳴り込んだこともありました。今の時代だと問題になったかもしれませんが(笑)。
そういう親の姿はいつまでも残りますね。私も体を張って子どもを守りたいですし、両親からしてもらった以上の愛情を注ぎたいと思っています。私の知り合いは、逆に「私は親から十分に愛情を受け取れなかったから、自分の子どもにはしっかりと愛情を注ぎたい」と言います。幼少期のどんな経験も、子育てにはプラスに働くはずです。
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