メルカリが電子決済の覇権を握る日:小売・流通アナリストの視点(1/5 ページ)
メルカリは中古品流通業界を制するといった小さなことを目指していない。彼らが握ろうとしているのは今後キーになる「電子決済の覇権」なのだ――。
「リサイクルショップが『倒産急増』、背景にはフリマアプリの存在も(帝国データバンク)」という記事を見かけた。2018年のリサイクルショップの倒産件数が前年度の2倍と急増しているが、その背景としては、メルカリを初めとするフリマアプリの台頭によってシェアを奪われたことが大きいという。リサイクルやエコといった環境への意識が定着し、近年急速に成長してきたリユース市場だが、その主役はリアル店舗のリサイクルショップから、フリマアプリなどのネット事業者に移りつつある、ということだった。
筆者も時々、フリマアプリを使って中古品を処分することがあり、確かによくできていると感心する。写真を撮ってアプリに出品するところから、売れたときの発送の手順まで誘導してくれるので、慣れていない人でもすぐに始めることができる。お金のやりとりも、入金が確認できた段階で、発送準備に進める仕組みになっているので、モノだけ取られてしまう心配もない。
発送するのは若干手間なのだが、それも包装さえすれば、アプリが出してくれる2次元バーコードを郵便局や宅配便受付にある端末にかざすだけで、匿名発送の手続きが完了し、店頭で渡すだけ。値付けに関しても、検索すればすぐに適正な価格帯が分かるし、価格変更も簡単なので調整すれば売れていく。何よりも売り手と買い手が双方向でつながっているため、追加情報請求や値下げ交渉ができて、ちょっとしたミニビジネス的な面白みがあり、好きな人にはゲームのような楽しみ方ができるようだ。やってみると分かるが、売れると私のようなおじさんでもちょっとうれしい。
こうした手軽さと楽しさで、フリマアプリは急速に浸透していて、最大手メルカリは8000万ダウンロード超とリユース市場における「社会的インフラ」となりつつある。いわば、中古品取引所ができたようなものであり、従来はよく分からなかったエンドユーザー段階の適正価格が事実上公示されるようになったということだ。そして消費者が気軽に取引所で売買できるのだから、中古品流通の主役がフリマアプリになるのも至極当然な流れだろう。
ただ、アプリはあくまで個人間の交渉によって売買が成立するので、出品した数だけ交渉と発送の手間が発生する。また散発的に送られてくる交渉のメッセージに即レスせねばならないし、売れれば速やかに発送する必要があるため、正直、忙しい人は面倒が見切れないかもしれない。大量のものを一気に処分するのには、かなりの労力が必要となるため、時間に余裕のない人や面倒くさがりの人は、リサイクルショップにまとめて持っていったほうがいい、という気になるかもしれない。
また、このアプリで中古品を処分する場合は、個人間売買となるため1件ごとに配送料(大きさに応じて200円程度〜1000円程度)が掛かる。また、売買価格の10%を手数料としてフリマアプリに徴収されるので、売買価格×90%>配送料で売れないと足が出てしまう。そのため、配送料よりも高い値段がつかないもの(1000円以下のものを個別に判定)については、このアプリには向かないため、処分しようとするとまとめてリサイクルショップに持っていったほうがいいことになる。
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