メルカリが電子決済の覇権を握る日:小売・流通アナリストの視点(2/5 ページ)
メルカリは中古品流通業界を制するといった小さなことを目指していない。彼らが握ろうとしているのは今後キーになる「電子決済の覇権」なのだ――。
ぬぐい切れない「在庫リスク」
値が張るものはアプリで、あまり値が付かないと思われるものはリサイクルショップに、ということになると、持ってこられるリサイクルショップの方はたまらない。これまでは、いい値が付くものと、そうでないものとを一緒に持ち込んでくれていたからこそ、そうでないものも買い取る意味があった。売れないものばかりが持ち込まれるのでは、店は在庫の山になってしまう。こうした状況がうかがえるのが、リサイクルショップの在庫回転期間(商品在庫÷平均月間売上――基本的に短い方がよく、長くなると不良在庫がたまっていることが懸念される指標)の推移である。
大手上場リサイクルショップ(ハードオフ、トレジャーファクトリー)の在庫回転期間が、ここ数年で長期化している傾向が分かる。大手2社とも売り上げは増収傾向を維持しているが、それでも在庫の動きは悪化している。リサイクルショップに行くと分かるが、昔なら「これは買えません」といって返されていたものも、1円ずつ値付けして買い取ってくれる。フリマアプリに対抗するため、来店してくれた客に配慮して、また持って来てくれるようこうした対応をしていると思われるが、これまでは買い取らなかった商品の分だけ在庫の質は悪化する。こうした対応の結果が財務にも表れ始めているのだと個人的には考えている。
そもそも、こうした「在庫」は、フリマアプリのビジネスモデルには存在しない。フリマアプリは「取引所」であって、売買はあくまで個人間で行われ、その「場所代」として手数料を取る商売なので在庫は発生しない。これに対してリサイクルショップは、個人から買い取って在庫にしてから、買取価格に利幅を上乗せして販売して利益を得るのであり、必ず在庫リスクを背負って商売をしている。この在庫リスク管理(≒買取価格、販売価格を最適化するための仕組み)のシステムコスト、人的コストが掛かるため、リサイクルショップは60〜70%の粗利率を確保しなければ、ペイしない商売なのだ。
中古品は不要品として市場に出されたものでもあり、売れ残りリスクも高いため、リサイクルショップの買取価格は利ザヤ+ロス分を加味したものになる。一方フリマアプリでは、実質的には配送料+売値の10%しかかからないのだから、売る側・買う側の両方にとって価格的には、アプリを使う方がいいに決まっている。中古品流通のフリマアプリへのシフトは今後さらに進み、リアル店舗のリサイクルショップはプレイヤーの再編を余儀なくされるだろう。
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