メルカリが電子決済の覇権を握る日:小売・流通アナリストの視点(3/5 ページ)
メルカリは中古品流通業界を制するといった小さなことを目指していない。彼らが握ろうとしているのは今後キーになる「電子決済の覇権」なのだ――。
シェアを取れば収益は後からついてくる
フリマアプリ最大手といえばメルカリであり、その総取扱高は19年には5000億円超(リサイクルショップ最大手は、ゲオホールディングスで1066億円/19年)となる勢いで成長しているものの、決算としては赤字が続いている。その要因は、費用の3割以上を広告宣伝費につぎ込み、ダウンロード数、利用者数、アクティブユーザー数の拡大に努めていること、また人材への先行投資、だと会社は説明している。彼らが収益よりも、消費者への浸透を優先している理由は、中古品流通における圧倒的なシェアを確立し、スタンダードになることが重要だからである。
「取引所」型のビジネスモデルなので、損益分岐点を超えた時点で、あとは売り上げに比例して儲(もう)けが増えていく計算だ。シェアさえ取れば、収益は後からついてくるのである。しかし、メルカリが業界最大手となっても、さらに圧倒的なシェアを目指すのには訳がある。彼らの目指す未来は、中古品流通業界の覇者などという小さなものではないからだ。
電子決済システムで存在感増すメルペイ
中古品流通の圧倒的なシェアを持つことは、19年2月からスタートした電子決済システム、メルペイの行方にも大きな影響を及ぼす。競争が激化している電子決済手段のなかでもメルペイは、中古品販売代金という唯一独自のチャージ手段を持っている。メルカリで売れた代金はメルペイの中にプールされ、(1)メルカリで購入するのに使うか、(2)メルペイで支払うことに充てるか、(3)銀行に振り込むか、を選べる。(1)が最も望ましいが、メルカリ外で使われる際はメルペイで使ってもらうようにすれば、メルペイが他の決済手段より使う理由のあるツールになるはずだ。
メルペイには、あと払いというかなり画期的な機能もついた。メルカリでの購入代金の支払いや、加盟店での支払いを、翌月にまとめてあと払いできるというもので、購入時にお金がなくても買うことができ、翌月の売上代金を貯(た)めて支払いに充ててください、というものだ。この機能があれば、アプリ内での売買をより誘い込むことができるため、メルペイの中で動くお金も自然に増えることになる。
当然、あと払いは立て替えであるため、貸し倒れのリスクはあるが、数万円の小口上限設定を取引実績に応じて会社が決めていて、翌月その分を売れば資金は入ってくるため、通常の与信よりもリスクはかなり小さい。メルペイはこうした便利な機能も併せ持っていることで、他の決済手段との差別化をアピールできるだろう。
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