「複々線」にできない混雑路線は、乗客をどうやってさばくのか:理想はあるけど(2/4 ページ)
混雑を緩和させるために、首都圏の鉄道会社はさまざまな取り組みを行っている。そのひとつに「複々線化」がある。その一方で、複々線化を実現できない混雑路線もある。そうしたところは、多くの乗客をどうやってさばいているのか。
東急田園都市線は一部が複々線化
混雑が激しく、池尻大橋〜渋谷間で混雑率185%となっている東急田園都市線はどうなっているのか。通勤時間帯に二子玉川〜渋谷間では全列車各駅に停車して「急行」を走らせず「準急」と「各駅停車」にし、ダイヤの遅れを少しでも緩和しようとしている。
一方で、田園都市線も一部を複々線化し、乗客の流れを渋谷方面に向かわせず、大井町方面に向かわせるようにして混雑を緩和している。二子玉川〜溝の口間では複々線化し、溝の口や二子玉川で大井町線に乗り換えてもらい、多摩田園都市から流れてくる乗客を二手に分け、勢いを緩和しているのだ。
田園都市線は大手町などのオフィスエリアに直結する一方で、大井町線・京浜東北線のルートは、品川や有楽町、丸の内などに向かうには便利なルートである。幸いにして都心部には複数のビジネスエリアがあるため、このように人の流れを分けるというのも有効な戦略として感じられる。
大井町線から田園都市線に合流し、溝の口までの複々線の区間をさらに延伸すればもっとスムーズになるのでは、という疑問も多くの人から出てくるはずだ。
もちろん、そこには複々線化の計画がある。交通政策審議会の答申「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」(2016年4月)では、「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクト」として、「東急田園都市線の複々線化(溝の口〜鷺沼)」というものがある。
これは「東急田園都市線の混雑の緩和」を目指すものであり、多摩田園都市から押し寄せる乗客を、多摩田園都市の中で渋谷方面と大井町方面にふたつに分けるというものである。この複々線化が実現すれば、田園都市線内での混雑も緩和され、通勤時に二子玉川以西での高速化も可能になってくるだろう。
ただしこの計画は、当分先のこととなっており、実際に進んでいるとはいえない状況だ。
西武、東急ともども、短距離を複々線化し、別の路線につなげることで、それなりの効果を発揮している。だが、それすらできない路線は、どうなっているのか?
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