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自動車を売るビジネスの本質 マツダの戦略池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/5 ページ)

原理原則に戻ると自動車ビジネスもシンプルだ。商品とサービスに魅力があれば、新車を正価、つまり値引きせずに売れるから中古車の相場が上がり、その結果下取り価格が高いので、買い替え時により高いクルマが売れる。これが理想的サイクルだ。それを実現した例として、マツダの取り組みを歴史をひもといてみよう。

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コモンアーキテクチャー

 そこで、すべての商品の属性をそろえ、理念や数理モデル、デザインコンセプトなどの基礎を全製品で共用化するという考えに至った。従来の単純な部品の共有化ではなく、同じ設計概念や実験データを転用でき、同じ製造ラインで作れるように、もっと高次元な部分で特性をそろえたのだ。それがマツダの言う「一括企画」と「コモンアーキテクチャー」である。生存の道はそれを成功させる以外になかった。


マツダのコモンアーキテクチャの考え方

 この新しい考え方「SKYACTIV」は当初エンジンなど要素技術から着手されたが、12年にクルマ1台が全てSKYACTIVで統一された初代CX-5が発売された。マツダはそこから「価値訴求販売」つまりブランド価値向上にかじを切ったのだ。

 いくら販売戦略を立てても、商品そのものに魅力がなければ話にならない。マツダはまず、SKYACTIVの導入でベースとなる商品力を高めたのである。

 ところが商品には鮮度がある。新車を華々しくデビューさせても、時間の経過とともにその価値は落ちていく。従来、新型車はデビューから2年、または3年でマイナーチェンジをして、リフレッシュする。業界で言う新車効果だ。鮮度を回復した商品は、値引かなくても売れる。

 しかしながら、マイナーチェンジ直前のクルマは結局投げ売りになってしまう。この値引きのピーク値が中古車相場を破壊するのだ。だからマツダはマイナーチェンジを止めた。

年次改良


従来の2年おきのマイナーチェンジでは、直前の価格下落が大きくなりブランド価値を毀損(きそん)する。これを年次改良に置き換えることで、下落幅を抑制することが非常に重要である

 どうするのかといえば、一括企画/コモンアーキテクチャーを生かし、特性をそろえた共用部分に全精力をつぎ込んで改良を続けるのだ。料理に例えるならばホワイトソースの品質を高めれば、グラタンもシチューもコロッケもドリアもパスタソースも全てレベルアップするということだ。部品流用はしょせん、刻んだ玉ねぎや人参を共用するような話だが、ソースのレベルで戦略化すれば、レストランの全メニューを一気に改善し続けることが可能になる。マツダの全ラインアップはコモンアーキテクチャーによって共用化されているので、この基礎部分に改良を加えれば、その効果は全車種に適用できることになる。


マイナーチェンジをするのではなく、小刻みに年次改良を続ける

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