仕事の全体像と目的を伝える
生産性を高めるために、メンバーそれぞれが一部の工程だけを担当するような体制を作ってしまうと、一部だけを担当する人間は全体像が見えなくなります。何のための仕事をしているのか分からず、やる気を出せなくなってしまいます。
得意分野で役割分担することは効率的ですし、そのこと自体は悪くはありません。しかし、だからといって全体像や目的まで知らないようにしてしまうと、むしろやる気は出ずに、生産性は下がってしまいます。
たとえ担当するのが一部の工程であっても、全体像や目的を知っておくことができれば、より高い目線で仕事にのぞめるようになるし、チームの一員として貢献している気持ちが強くなります。創意工夫をするにしても、目的を知っている方が効果的なアイデアが出せます。
私たちの会社ではシステムの受託開発をしていますが、お客さまから相談を受けるとき、どんなシステムを作りたいかを話す前に、
- 「どんなビジネスをしたいのか」
- 「どんな社会を実現したいのか」
といったことから話をします。もちろん、ビジネスを成長させる部分まで私たちが担当するわけではありませんが、それを知っていればテクノロジーの観点からのアドバイスはしやすくなりますし、顧客と同じ目線で考えられるようになります。
「仕事を依頼する」のではなく「問題の相談をする」
誰かに決められた仕事をしているだけでは、どうしてもそれが自分の仕事だとは思えずにやる気が出ないときがあります。それは自分で決めたことではなく、他人に決められた内容だからです。その人が担当できる部分ではないところがあったとしても、なるべく上流の段階から関係者として参画してもらっていた方がいいでしょう。
また、やってもらうことを決めてから仕事を依頼するのではなく、相談から入るのも一つの手です。「君は○○が得意だから、これをやってください」と言われるよりも、「困っていることがあって、君が得意な○○でなんとかならないか」と相談された方が気持ちよく取り組めます。
そして、仕事をするかどうかの最終的な判断は、本人にしてもらうようにします。NOと言える選択肢も渡してあげるのです。そうすると、他人が決めたことではなく自分で決めたことになるので、責任感も強く感じるようになります。
私たちの会社では、システムに新しく作りたい機能があるとき、「何を作るのか」から語らず、「何に困っているか」から話すようにしています。その困っていることをどう解決するのかを一緒に考えていけば、本人には自分の考えたアイデアを実現する仕事になるので、主体的に仕事に取り組んでくれるようになるからです。
社会にとって意義がある事業をする
もし自分の携わる事業が、反社会的なビジネスであったり、世の中に悪影響を与えるようなビジネスだったら、やる気を出そうにも難しいでしょう。誰も悪事の片棒を担ぎたいとは思いませんから。
お金を稼ぐことも大事ですが、「仕事を通じて世の中をよくしていくことに貢献できる」と思えた方が、前向きに働くことができます。
事業に取り組む組織にはビジョンや価値観があるので、それを知った上で本人の信条ともフィットするならば、やる気を持って仕事に取り組めるはずです。より多くの人にやる気を持って一緒に働いてもらいたいならば、社会にとって意義のある事業に取り組むべきなのです。
私たちの会社で事業を始めるときは、「もうかるかどうか」の前に、「困っている人がいて、自分たちに助けられるかどうか」といったところから考えています。いくら簡単にもうかりそうなビジネスがあったとしても、それだけでは結局は続けていけないからです。
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