社長がスナックのマスターに!? 働きがいがある会社の「ミッション」「ビジョン」の伝え方:「伝わり度」が分かるチェックシート付き(2/2 ページ)
変化の時代に社員がブレずに同じ方向を目指すのは重要なこと。働きがいがある会社は、その指針となるミッションやビジョンをどうやって社員に伝えているのか。
gCストーリーの取り組み――月1回の社長研修
同じような社長ミーティングでも、gCストーリーはまた、全然違った雰囲気で行っている。
対象は新入社員が中心。毎月1回、オフィスで社長との対話の場を設けている。そこで語られるのは、「仕事の話」というより「人生の話」らしい。「どんなふうに生きたい?」「どんな人生を送りたい?」「それって、gCストーリーはどうやったら応援できるのかな?」という感じらしい。
その他の変わった取り組みとして、gCストーリーでは、「両親参加の内定式」というのも行っているということだ。理念の共感は両親から――ということなのだろうか。
ケンブリッジの取り組み――37項目の経営方針書
筆者が所属するケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズはどうしているかというと、ミッション、ビジョン、行動規範に加えて、日々の意思決定で大事にするべき「6カテゴリー、37項目の経営方針」が明文化されている。
これを見れば、「何をよりどころにして意思決定し、どこに向かっているのか」が分かる。その結果、「どんな会社を目指そうとしているのか」が分かるようにしているのだ。
マルケトの取り組み――社内報でビジョンを共有
マルケトは、社内報に力を入れている。「自分たちは何者で、何を目指しているのか」や、最近のトピック、お客さんの声などを載せて全社員に配る。
社員はこれを持ち帰り、家庭でも見せる。「うちの会社ってこんな感じでさ、こういうことを目指して仕事しているんだよ」なんて会話がなされるのだという。人に語る、教えるという行為は最も身になるので、話しているうちに、会社の経営方針やビジョンが腑に落ちる、というわけだ。
自社の状態を客観的に眺めてみる
5社の施策を取り組みを見ると、目指す状態が同じでも、取り組み方は各社それぞれで異なることが分かる。
これらを受け、筆者は、「ウチの会社はどうなんだろう?」を自問自答してみた。ケンブリッジでは、経営方針の“見える化”は行ってきた。だが、各社の動きと比べて、共感してもらうための工夫が少し足りないように思えてきた。
ケンブリッジの社員が30〜40人だった頃には、経営陣との対話は活発で、特に何もしなくても自然と思いが伝わっていた。しかし、社員が100人を超えてくると、意図的に対話を仕掛けていかないと「経営理念が伝播・共感された状態を保つ」ことは難しいと実感した。
そこで、ケンブリッジでは、「社長との座談会『カエルBar』」を実施することにした。freeeの取り組みをまねたものだが、テーマは決めず、その時の参加者が抱えている疑問や質問を中心にフリートークをしていく形を採用した。加えて、年次に応じて定期枠を設けて、社員には半強制的に参加してもらうようにしている。
社外のスナックを借り切るのではなく、社内のBarスペースを利用し、そこで“ゆるゆると”やるスタイルにした。社内なので、他の社員も飛び入り参加できる。このやり方で、ケンブリッジらしいやり方ができたのではないかと思っている。
5つの質問で「経営理念が伝播・共感された状態」かどうかを確認
このような感じで、「自社では経営理念が伝播・共感された状態を保てているか?」と自問してみるといい。自問した結果、取り組みが十分ならそれでいいし、不足しているなら、「何が不足しているのか」「自社に合った補強の仕方はなにか」を考えてみるのだ。
ケンブリッジに、もし経営方針書がなかったら、社長との座談会「カエルBar」ではなく、経営方針書の作成を優先させたと思う。
あなたの会社ではどうだろうか? どんな状態で、何が不足しているだろうか?
自社の状況を客観的に見つめるために、自問自答リストを作ってみた。考えるきっかけになれば幸いだ。
- Q: 経営理念が伝播・共感された状態を保てているだろうか?
- Q: 伝播・共感される対象である「経営理念」は、言語化されているだろうか?
- Q: 経営理念の行間に隠された、背景・文脈・思いは明らかになっているか?
- Q: 伝播し、共感してもらうための工夫は適切だろうか? 社員任せになってないだろうか?
- Q: 改善するなら、何からどう手を付けるのが適切だろうか?
著者プロフィール:榊巻亮
コンサルティング会社、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズのコンサルタント。一級建築士。ファシリテーションとITを武器に変革プロジェクトを支援しています。
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