「びゅうプラザ終了」で困る人はいない “非実在高齢者”という幻想:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)
JR東日本の「びゅうプラザ終了」報道で「高齢者が困る」という声が上がっている。しかし、そのほとんどが当事者による発言ではない。“非実在高齢者”像を作り上げているだけではないか。実際には、旅行商品や乗車券を手にする手段もサポートもたくさんある。
びゅうプラザはJR東日本の旅行会社
「びゅうプラザ」は、「みどりの窓口」の付加価値版という位置付けの窓口だ。JRのきっぷだけでなく、宿泊や観光イベントなどを組み合わせた「旅行商品」を販売する。いわばJR東日本直営の旅行会社である。実際には旅行商品の開発と窓口拠点のいくつかはJR東日本グループの「びゅうトラベルサービス」が実施しているけれども、利用者からは「JR東日本の旅行会社」に見える。
びゅうプラザは国鉄時代に設置されていた「駅旅行センター」がルーツだ。初設置は1968年の名古屋駅旅行センターで、その後全国に拡大した。68年といえば昭和43年。10月にはのちに「ヨンサントオ」と呼ばれる全国規模のダイヤ改正があった。幹線の複線化と電化が進み、寝台電車583系、特急電車485系が増備され、全国で特急・急行が増発された。航空券は高価で、高速道路網は整備されていなかった。旅といえば長距離であっても鉄道が当たり前の時代だ。
その一方で、国鉄は66年から赤字体質となっていた。列車の設備投資も借金で行われ、営業面の強化が求められた。そこで、日本交通公社(現・JTB)、日本旅行などの旅行会社と提携して、駅旅行センターが設置された。73年には小規模窓口を含めて170拠点以上があったという。
国鉄分割民営化によって、JR旅客会社は駅旅行センターを継承する。その後、JR東日本は「びゅうプラザ」、JR北海道は「ツインクルプラザ」、JR東海は「JR東海ツアーズ」、JR西日本は「TiS 」、JR四国は「ワーププラザ」、JR九州は「旅行の窓口」となった。そして、どのブランドもJR発足後は好調で店舗数も増やした。「びゅうプラザ」は最大時で180店舗もあった。しかし、その後は各社とも店舗の整理が続く。オンライン宿泊手配サービスの利用者が増え、乗車券もオンライン手配が増えた。「びゅうプラザ」終了は時代の流れだ。
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