「びゅうプラザ終了」で困る人はいない “非実在高齢者”という幻想:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/5 ページ)
JR東日本の「びゅうプラザ終了」報道で「高齢者が困る」という声が上がっている。しかし、そのほとんどが当事者による発言ではない。“非実在高齢者”像を作り上げているだけではないか。実際には、旅行商品や乗車券を手にする手段もサポートもたくさんある。
「駅チカ一等地」の商売ではない
「びゅうプラザ」の終了を分かりやすく言うと「不採算」だろう。また、オンライン販売の台頭により、窓口の業務がすでに「販売」から「相談」に変わっている。私は品川駅コンコースの「びゅうプラザ」を何度か利用したけれども、JR券の購入だけだった。「みどりの窓口」が混雑していたから「相談」に行き、そのまま発券してもらった。これは本来、みどりの窓口が多ければ済む業務だ。
そして見渡せば、訪日旅行客の相談が多いようだった。確かに日本人の旅行商品購入客もいた。外にあったパンフレットを見て、ふらりと訪れる客たちだ。しかし、みどりの窓口の混雑に比べれば閑散としていた。びゅうプラザがあるのは、駅の改札の真正面である。この立地なら、飲食、物販のほうが売り上げを期待できる。びゅうプラザの価値は認めるけれど、残念ながら地価相場のバランスが取れていない。
最盛期に180店舗もあったびゅうプラザは、次第に減少して現在は51店舗。今後、北上駅は7月31日に終了、8月31日には蒲田・中野・町田・新浦安・津田沼・平塚・武蔵溝ノ口で終了。9月に東京駅八重洲中央、20年3月31日に千葉・水戸・大船で終了。……と、段階的に閉店していく。報道では突然終わるように感じたかもしれないけれど、すでに約130店のびゅうプラザが消え、大きな混乱は報じられていない。なぜなら、代替手段としてインターネット予約サービス「えきねっと」と、会員制サービス「大人の休日倶楽部」があるからだ。
救済手段の受け皿は「大人の休日倶楽部」
「大人の休日倶楽部」は、男女とも50歳以上から入会できる「大人の休日倶楽部ミドル」と、男性65歳、女性60歳から入会できる「大人の休日倶楽部ジパング」がある。「ミドル」は年会費2575円。JR東日本とJR北海道の乗車券類が何度でも5%引きで購入できる。「大人の休日倶楽部ジパング」は年会費4285円。夫婦会員は2人で7320円とちょっと安い。JR東日本とJR北海道の乗車券類が何度でも30%引き。また、他のJR会社も1〜3回目まで20%引き、4〜20回目まで30%引きになる。
「大人の休日倶楽部」は専用クレジットカードの契約が条件だ。クレジットカードを持たない人にはJRグループ各社共通の会員サービス「ジパング倶楽部」がある。男性65歳、女性60歳から入会できる。夫婦会員制度があり、夫婦どちらかが65歳以上で入会できる。65歳と20歳という夫婦でもOKだ。年会費は3770円、夫婦会員は6290円。郵送で申し込み、年会費を振り込むと会員証が送られてくる。「JR東日本のジパング倶楽部」にクレジットカードという付加価値を与えたサービスが「大人の休日倶楽部ジパング」だ。
JR東日本は旅行商品をダイレクトパッケージに特化し、インターネット販売に絞る。しかし、大人の休日倶楽部会員向けには今後も多彩な旅行商品を提供する。大人の休日倶楽部もインターネット会員サイトの販売が主だけれども、会員誌「大人の休日」に同梱されて届くパンフレットに予約センターの電話番号が記載されている。びゅうプラザに替わるサービスがあれば、中高年の会員の方々が、旅行の手配のために駅に行く必要はない。びゅうプラザ利用者のうち、「えきねっと」などインターネット販売を利用しない人は、「大人の休日倶楽部」と「ジパング倶楽部」が受け皿になる。
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