「テレビ局が株主だから大丈夫」宮迫・亮の謝罪会見に見る、吉本興業の深刻な勘違い:専門家のイロメガネ(5/6 ページ)
宮迫・亮の謝罪会見で注目されたのが、「在京5社、在阪5社のテレビ局は吉本の株主だから大丈夫」といわれた、という発言だ。これは吉本が「テレビ業界の子会社」のような位置づけに近いことを意味する。事務所を辞めるべきは芸人なのか、それとも事務所幹部なのか? そして甘い対応をすれば、テレビ局にも責任が発生する可能性もあるのではないか?
吉本興業のトラブルはテレビ局にも飛び火する可能性がある
記事の執筆時点では、社長がこれから会見をすると報じられている状況のため、二人の謝罪会見について吉本側の言い分はまだ得られていない。当然のことながら吉本の言い分にも聞く耳を持つ必要がある。
ただ、契約書を書面で交わさないと会長が公言しており、再発防止が十分とはとても見えない。
結局、吉本は暴力団排除条例や(テレビ局との契約書に含まれているはずの)反社条項の順守について、グレーな状況にあるのではないか。
松本氏は会長と面談した際に会長側が辞意を漏らしたことに触れ、彼が辞めるなら僕も辞めるとも発言している。
経営陣の辞任に関する話が出てきたところで、誰かが辞める、あるいは会見でしっかりと謝罪する、そういった対応で幕引きとなるのだろうか。筆者はそれでもこのトラブルは終わらないだろうと予想している。ここでテレビ局各社の持ち株という話につながってくる。
テレビ局は公的な存在でもある
今回のトラブルは仕事中に発生したトラブルであり、明らかにマネジメントのミスだ。つまり組織としての責任が問われる事態である。テレビ局が株主として経営陣を総取替もできると書いたが、机上の空論だと鼻で笑う人もいるかもしれない。
しかし、テレビ局は総務省の管轄の元、免許を受け公共の電波を利用して放送事業を行う半ば公的な存在だ。そして民放各社は多くが株式上場もしており、株式市場は多額の年金資産が運用されるなど半ば公的な場でもある。そこで株が取引される上場企業も半ば公的な存在だ。
つい先日には2011年に発生した粉飾決算の事件を巡って、オリンパスの監査を行っていた監査法人に対して、個人株主が約2112億円を賠償するよう提訴した。すでに経営陣の何人かは刑事事件としては執行猶予つきの有罪判決を受け、民事事件としては16人の旧経営者が590億円の賠償を命じられている。
これだけ厳しい罰が下る理由は、上場企業は営利組織であると同時に半ば公的な存在でもあるからだ。
つまりテレビ局は、国から放送免許を受けているため総務省から、そして上場していることから株主から、なぜ吉本との関係や取引について甘い対応をするのか? と追及されれば、今度はテレビ局の経営陣が厳しい立場にさらされる。前回の記事「テレビ局が吉本興業を出入り禁止にすべき理由」で以下のように書いた通りだ。
「テレビ出演で有名になったタレントが暴力団の会合で営業をしてお金を受け取っていたら、テレビ局は間接的な加害者となり、少なくとも道義的な責任は免れない。そしてずさんなマネジメントを行っている事務所と取引を続けるのであれば、道義的責任では済まない可能性もある」
テレビ局の経営陣は、自身が株主や総務省から批判されないために、吉本の経営陣に対して今回の騒動で発生した損害を賠償させる必要がある。吉本の「管理人」として株主から依頼を受けた経営者が責任を果たさず、それどころか人気芸人を流出させ、著しいイメージダウンを引き起こした……。それならば管理人として不適切だから辞めさせたうえで損害賠償をさせる、ということだ。例に挙げたオリンパスで起きたことはまさにそれだ。
田村氏が謝罪会見を行いたいと直訴した際に、社長自ら「会見をやるなら全員、連帯責任でクビだ」と言い放ったことについて、東野幸治氏は「おごり高ぶっている」、松本氏も「あいつらいつからそんなに偉そうになったのか。芸人ファーストで芸人がいてこそのあんたたちだろう」と怒りを露わにした。こういった言動についてもビジネス視点で考えれば企業価値、吉本としてのブランド価値を毀損(きそん)している。このような言動が事実であればその責任は免れようがない。
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