スバルが生まれ変わるために その2:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)
北米での取材の途中、いくら議論しても結論は出なかった。そこで帰国後、スバル本社でもう一度取材を行う。しかし、本社に出向いても、結局のところスバル側に投げてあった「戦略があるかないか、あるなら具体的な戦略を教えて欲しい」という質問には明確な回答はなかった。スバルは変わらなくてはならないことをすでに十分分かっているはずだ。しかしながらその変革を実現していく組織改造が、まだ始まっていないのだと思う。
そういう組織の形の理想については、先日、たまたまマツダの販売戦略の説明会があり、記事化しているので是非参照していただきたい。誤解なきように書いておくが、あらゆる面についてスバルよりマツダが優れているなどというつもりは全くない。今スバルが統合戦略本部を設けてやるべきこと、つまり不足している部分について、マツダは戦略的対応をうまくやっている。ひとつの比較対象として述べているだけだ。
スバルは変わらなくてはならないことを、すでに十分に分かっているはずだ。しかしその変革を実現していく組織改造が、まだ始まっていないのだと思う。筆者の勝手な思いでいえば、スバルの現状と未来が一番見えている吉永会長を中心とした組織変革委員会を設立して、スバルの人たちが、もっともっと能力を発揮し、強い会社に生まれ変われるシステム作りを早急に始めてほしい。
筆者は、スバルが本質から変わるために少しでも役に立てばと思ってこの記事を書いている。書くのは正直怖い。けれど、誰かが言わなければ変わらない。
筆者の勘違いでなければその思いはスバルにも伝わっており、はっきりとはいわないまでも、しかるべき説明にむけ、調整しようとする様子がうかがえる。それが果たせた折には、その3へと、この連載は続いていくことになる。
最後に念を押しておくが、仮にこれを読んで、対応したスバル内部の人を探し出して、しかりつけるようなことが起きたとしたら、スバルの未来はやってこないと思う。むしろ変わるための大事なポイントを明確にした意味では、彼らを評価してしかるべきだ。
スバルは今勝負の時を迎えている。困難を乗り越えて、もう一度信頼を勝ち取るためにも、経営陣の英断を強く望みたい。
関連記事
- スバルが生まれ変わるために その1
筆者を、スバルは北米の有力ディーラーへと招待した。ペンシルバニア州アレンタウンの「ショッカ・スバル」は、新車・中古車を合わせた販売数で全米1位。新車のみに関しても、全米最多級である。「スバルは他と違う」と、この自動車販売のプロフェッショナルは、本気でそう思っている。けれど、具体的に何がどう違うのかが全く説明されない。北米ビジネスの成功について、何の戦略があり、何をしようとしているのか、それを知りたいのだ。 - スバルよ変われ
スバルが相次いで不祥事を引き起こす原因は一体何なのか? スバルのためにも、スバルの何が問題なのかきちんと書くべきだろうと思う。 - 続・スバルよ変われ(前編)――STI社長インタビュー
スバルの問題点を指摘した記事『スバルよ変われ』。そこで書いた「安全と愉しさ」だけでもなく、スバルの中期経営計画(中経)についても疑義があった。それは手の内を何も明かさない中経に何の意味があるかという疑問だ。スバルはもっと情報を開示し、スバルとはどういう価値を生み出す会社なのか。 - 続・スバルよ変われ(後編)――2040年のクルマ
前編の「安心と愉しさ」を実現するための、スバルの新たな3つの軸と、未来のスバルへの情報開示をどうしていくのかという話に続き、2030年、40年のスバルはどうなるか。STI社長兼スバル技監である平川良夫氏へのインタビューから。 - なぜSUBARUは米国で伸びたのか マーケティング戦略の“真意”
SUBARU(スバル)が米国で着実に成長している。販売台数は10年間で約3.5倍に。好調の背景に何があるのか。そのマーケティング戦略について、現地で探った。 - 雪上試乗会で考えるスバルの未来
スバルは、青森市内から八甲田山、十和田湖を経由して安比高原までのコースを走るアドベンチャー試乗会を開催した。日本屈指の過酷な積雪ルートでスバル自慢のAWDを検証してくれというわけだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.