転職の「扇動者」にも「全否定派」にも惑わされないシンプルな心構えとは:先入観と風説を斬る(4/4 ページ)
勧める人と全否定する人で両極端になりやすい転職への意見。双方の主張に潜む業界事情や誤認を、コンサルタントが徹底解説する。
「成功確率が低いから」諦めるのか?
そして最後に言っておきたい点が、メンタリティの問題です。確率が低いからやめておけ、などというのは、あまりにもネガティブかつ短絡的な考え方で到底同意できません。
例えば、新商品が生き残る確率は、飲料の分野では1%以下です。また、筆者が所属するコーン・フェリー・ヘイグループの調査では、M&Aが所期の成果を達成できている確率は1割程度であるという結果が出ています。
では、企業は新商品を出すのをやめるべきなのでしょうか? 経営者はM&Aを諦めるべきなのでしょうか?
そのようなことは断じてありません。そんなことをすれば企業の成長、社会の発展は停滞してしまいます。むしろ新商品の成功確率は低い、M&Aは成功より失敗のケースが多いからこそ、多くのビジネスマンや経営者は必死になってその成功確率を高める努力をしているわけです。
現時点では成功確率は低い(先述した通り、実際には低くないのですが)、だからやめておいたほうがいい、という考え方は、極めて短絡的かつネガティブで、思考を放棄しているとしか言いようがありません。
転職について人にアドバイスする立場にあるのであれば、むしろポジティブに「ではうまくいっている25%の人と、うまくいかなかった75%の人の差は何なのか? どうしたらまねできるのか?」くらいのレベルまでは思考を推し進めてほしいところです。経営学で言うところのベスト・プラクティスという考え方ですが、こういった人たちはそういう思考にどうしても至らない。なぜか?
つまるところ、こういう主張をなさる方は、論理云々(うんねん)の問題以前にもう「転職が嫌い」なのでしょう。であれば「事実や論理はさておき、自分は転職が嫌いだ。人は最初に入った会社で一生頑張るべきである」とストレートに主張すればいいのです。下手に統計数値を持ち出して、さも自分はニュートラルで合理的な主張をしているように見せかけようとするからかえって馬脚を露(あら)わすことになるのです。
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