“上司なりすまし”被害も 深刻化する偽動画「ディープフェイク」の脅威:世界を読み解くニュース・サロン(1/4 ページ)
本物と見間違うような偽動画「ディープフェイク」が世界で問題視されている。最近では、FacebookザッカーバーグCEOの偽動画も話題になった。社長や上司になりすまして企業に電話をする「ディープフェイク音声」の被害も発生。日本でも注意が必要だ。
ディープフェイクが騒動になっている。
この連載でも以前取り上げたことがあるディープフェイク(関連記事:まるで本物 「ディープフェイク」動画の危険性)。ディープフェイクとは、人工知能(AI)によって、動画で人の顔などを他人に変えてしまうことができる技術のことだ。ディープフェイクには、顔を完全に入れ替えてしまうものや、自在に他人の口や顔の表情を操作してしまうもの、声と発言内容を変えてしまうものなど、いくつもの種類がある。
そして、そのクオリティーを見ると、まるで本人と見間違うほど自然な動画を作ることができる。しかも、ディープフェイクを作れるアプリまであるため、映像編集などの知識や能力がなくても作れてしまうのだ。
そんなディープフェイクが最初に登場したのは、2017年12月のこと。それ以来、いろいろと物議を醸してきた技術だが、最近さらに大きな問題に発展している。
まだ日本では本格的に広がっていないが、欧米では規制も始まっている。世界で今、ディープフェイクを巡って何が起きているのか。
クオリティーが高まっていく悪質動画
ディープフェイクが17年末に初めて登場した際も、直ちに問題視された。その理由は、この技術がアダルト映像に使われたからだ。
もともとは米サイトのレディット(Reddit)に投稿された、米ハリウッド女優のアダルト映像だった。映画『ハリー・ポッター』シリーズで知られる女優のエマ・ワトソンやスカーレット・ヨハンソン、米歌手のケイティ・ペリーやテイラー・スウィフトなどが、アダルト映像に出演しているかのような動画が作られたのである。つまり、有名人である彼女らの顔がポルノ女優の体に合成されていた。映画『ワンダーウーマン』のガル・ガドットは義理の兄と性行為をしているという偽動画が作られていた。
こうした動画の存在が知られると、あっという間に拡散された。動画を公開した匿名の人物が「Deepfakes」という名前を使っていたことから、こうした映像は「ディープフェイク」と呼ばれるようになった。
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